何も考えてないのよ、私。知ってるでしょう?

第22部──フリーランスから会社員に復帰しました

私は就職ができない13_内定受諾の件

【前回までのあらすじ】
数ヵ月間の就職活動を経てついに内定を獲得した私は、しかし恐れていた。

 

私には時間がなかった。オファーへの返信期限が迫っていた。週明けの月曜日の昼までに内定先に連絡しなければならない。

いまは金曜日の昼で、猶予は3日間。土日は毎週呆けている。となると今日と月曜日の午前中しか真剣に向き合う時間がない。いや、今日は花金だ。つまり、もう浮かれモードだ。今日はもう終わりだ。ならば思案する時間は月曜日の午前だけだ。

フリーランスで仕事がほとんどない現状にあっては浮かれている場合ではないし、オファー拒否に備えて引き続き就職活動をしなければならないとは思っている。しかし、なまじ内定を獲得したばかりに、私の心身はすでに浮き足立っている。ギークリーやリクナビエージェントで求人チェックおよび応募をする必要があるのにしてない。

もし内定を受諾して就職するとしたら、6月ごろには伝説の月給取りにジョブチェンジだ。安泰である。それを夢想すると、仕事に実が入らない。いやそもそもほとんどやるべき仕事がないので、身を入れることもないのだが。しかし、フリーランスを継続する場合に備えて、案件を探さなければならないのだが、それももちろんやる気がでない。

内定という黄金を手に入れて、勤労意欲が消え去り、将来への焦燥も霧散しつつある。つまりはもはや毎日がエブリデイというか毎日が花金だ。仕事をうっちゃり、就職活動をうっちゃり、案件探しをうっちゃり、キャリアプランの立案をうっちゃり、就職した場合の不安やデメリットに対して見えぬふりをしている。売上が激減しているので倹約が必要だが、月給とりになることを見越して財布のひもが緩んでいる。前借りのように金を使い、このあとだってすき家で定食を食べちゃう。

不届き者であり、現実に向き合わない自堕落な人間だ。私はサラリーマンになるのだろうか? 数年間のフリーランスという自由業を経て、勤め人になったとして、無傷なまま平静な毎日を送れると思っているのか? 

思っている! と思ってしまったのだ。私の特技は現実逃避である。先行きはいつも不透明で、リスクがあってもこれを未然には排除しない。出たとこ勝負でぶつかり、結果的に退散してきた人生だ。今回だって、就職してうまくいけば儲けものだが、失敗しても華麗に退職してフリーランスに戻るだけだ。困窮と焦燥の毎日に戻ることは地獄だが、勤め人もだいたいにおいて地獄だ。どちらに転んでも地獄なら、月給数十万円を約束された地獄に飛び込むのは悪くない選択だ。

本当にそうか?

 

第21部完