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新宿で終電を逃して歌舞伎町の温泉「テルマー」に泊まった翌朝の街はパリス、もう完全にパリス

野糞

先週金曜日、渋谷でラーメンを食べた後、久しぶりに夜の街に繰り出したくなった。

メールで旧友の西村を呼び出した。JRに乗って渋谷から新宿に移動し、紀伊国屋で合流した。時刻は夜の9時過ぎだった。

歩いて十分ほどのところにある「しょんべん横丁」というところに行った。思い出横丁ともいうらしい。俺も西村もここに来るのははじめてだった。

狭い通りにいくつもの飲み屋が並んでいた。店の中を見るとどこも酔客で一杯だった。半分以上が外国人のように見えた。店を探しながら通りを行ったりきたりしているうちに雨が降ってきた。店のひさしを伝って頭にぼたぼた雨水が垂れてきた。俺も西村もかさを持っていなかった。西村はフードをかぶり、俺は濡れるままだった。

通りを旅行客らしき白人がひっきりなしに往来していた。観光名所になっているのだろう。

俺と西村は通りの中ほどにある飲み屋に入った。狭くて急な階段を上がった。2階にはテーブルが3つあった。先客が10名ほどいた。みんな英語を話していた。

俺は焼酎のお湯割りを注文し、西村はビールを注文した。食べ物は焼き鳥とポテトサラダとウィンナーと煮込みを注文した。

一度ここに来て見たかったので、念願がかなってよかった。9時半ごろから飲み始め、日付が変った0時半の閉店まで居座った。その間食べ物の追加は頼まなかった。久しぶりに夜の街で痛飲してしまった。俺はお湯わりと、ウーロン茶と、ジンジャエールを浴びるように飲んだ。西村はビール、焼酎のお湯割り、ハイボール2杯、梅酒をちびちびと飲んでいた。

外に出るとまだ雨が降っていた。知らなかったのだが、このしょんべん横丁の多くの店は0時過ぎになると店じまいするらしい。のんべえが夜通し飲み明かすエリアかと思っていたが、拍子抜けした。俺たちはまだ飲み足りなかった。

通りには酔っ払いがたくさんいた。みんな幸福そうだった。夜はこれからだ。

俺と西村は眠らない街「歌舞伎町」を目指して歩き始めた。

途中、セブンイレブンでコーヒーを飲んだ。これでだいぶ吐き気がおさまった。

「ゴールデン街」に着くと、多くの店がまだ営業中だった。こちらは先ほどの横丁よりもさらに間口の狭い、立ち飲みがメインの店が多いようだった。

何本かの細い通りの両サイドにいくつもの店が軒を連ねていた。俺と西村は何度も通りを行ったりきたりして、店内を伺った。ここではない。ここは敷居が高い。外国人が多い。うるさい。人が少ない。などといっているうちに、どうもゴールデン街は俺たちにはまだ早すぎたのではないかと結論付けた。

帰るにもすでに終電はなかった。そしてまだお互い飲み足りなかった。大通りのほうに戻り、飲める店を探した。スポーツバーに入った。そこではサッカーの試合が放送されていた。バイエルン対ユベントス。チャンピオンズリーズの試合だ。ベスト16ぐらいか。第2戦。後半10分。2-0でユベントスがかっていた。たしかバイエルンが勝ち上がったはずだ。ここから追いつき、逆転するということか。

西村はジントニックを、俺はトマトジュースを頼んで乾杯した。俺も西村もサッカーが好きなので、お互い一言も喋らず試合に見入った。途中腹が減ったのでフィッシュアンドチップスを頼んだ。深夜2時に食べるには重過ぎるかと思ったが、そうでもなかった。深夜の歌舞伎町で健康食など食べていられるか。

試合はハーフコートゲームだった。引いて守るユーべと全員攻撃のバイエルン。コスタとコマンとリベリーがなんどもドリブルで突っかけてセンタリングを上げ、ユーべのDFが身体を投げ出して守っていた。終盤にレバンドフスキがヘッドで1点返し、最後の最後でコマンからのクロスをミュラーが頭で叩き込み同点とした。2戦合計で4-4。

これは延長が楽しみだと思った矢先に、なぜか画面が変り、テニスの中継になった。店内にあるすべてのモニターがテニスに変ってしまった。落胆した。客はだれも文句を言わなかった。カウンターに座っていた若い白人男性たちは、見るからにフットボール好きだったが、彼らもまた何一つ文句を言わなかった。酒を飲みにきたのだから当然といえば当然だが、誰か文句を言ってほしかった。白人たちはひたすら上機嫌にハイネケンをラッパ飲みしていた。

俺と西村はしばらくそれぞれの飲み物を飲んでいた。西村はお代わりしてビールを飲んでいた。俺はトマトジュースをちびちび飲んでいた。

お互い大量のしょんべんをしてから店を出た。

時刻は3時過ぎだった。流石に飲みすぎたかな。しかしハナキンなのだ。少しぐらい羽目を外してもいいだろう。3件目を探しに歌舞伎町の街を歩き出した。

雨がぱらぱら降っていた。なかなかよさそうな店が見つからなかった。歩いているうちに身体が冷えてきた。もう今日はやめにしよう。寒いし、流石に飲みすぎた。

店を探している時に見つけた温泉施設の「テルマー」で夜を明かすことに決めた。

以前テレビで見て気になっていた。2015年8月開業とあたらしく、施設は綺麗だった。

一晩4200円。タオルつき、館内着つき。安かった。新宿で終電を逃した人はここを利用しない手はない。

ロッカーも風呂も清潔だった。備品もそろっていた。風呂も内湯外湯があり、広さも申し分なかった。深夜3時過ぎなのに10人ぐらい客が入湯していた。若いホストみたいな人やサラリーマン風の人がいた。

風呂を出ると3Fと4Fの共有施設で仮眠ができた。リクライニングソファーがたくさんあり、寝心地は悪くなかった。混雑していると思いきや空いていた。金曜日の夜でこの程度の混雑具合ならば、普段はもっと空いているのだろう。もっとうるさい酔客や若者がいるかと思ったが、けっこう普通の身なりの人やカップルが多かった。あるいはそのような利用者は、B1Fの飲食スペースで風呂上りに一杯やっているのかもしれない。そちらにはいかなかったのでわからないが。

翌朝は9時に閉店だった。8時半に起こされ、着替えを済ませて外に出た。向かいは吉本興業の建物だった。前の晩に夜中なのに灯りがついているのはどうしてだろうと西村と話していた。学校の校舎のような施設なのも気になった。夜の歌舞伎町に小学校の校舎とはいったい・・・と不思議に思っていたが吉本だったのか。

吉本の横手に階段があった。見上げると向こうに桜の木の先端が見えた。西村と行ってみようということになり、階段を上がると、寺社があった。参道に満開の桜が咲き乱れていた。花園神社だった。外国人観光客の親子が朝の散歩をしていた。人は他にいなかった。しばし花見を楽しんだ。

新宿駅まで歩いた。雨模様だったが、降雨はなかった。デパートやブランドショップやパン屋が立ち並ぶ人通りの少ない通りを歩いていたら、無性にクロワッサンが食べたくなった。雨の朝がパリに似ていた。パリには一度しか行ったことがないので実際には似てないのかも知れないが、朝のパリという感じがした。だからコーヒーとクロワッサンが必要だった。近くにカフェがあったので、西村には先に帰ってもらい、一人でブラックコーヒーを飲みながらクロワッサンを立て続けに二つ食べた。今までにないほどうまいクロワッサンだった、完全にパリだった。

新宿駅に向かう道すがら、腹が痛くなった。昨晩の痛飲がいけなかったのかもしれない。コンビニのひどくせまっ苦しいトイレに駆け込み事なきをえた。そういえばパリの街には犬のうんこがそこかしこに落ちていたなと思い出した。新宿の街もこんなに清潔ではなく、パリのように飼い犬のうんこが散乱していれば、もっとパリっぽさがでるのになと思った。

 

【公式】新宿歌舞伎町の温泉:テルマー湯

 

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