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「街へ出てうんこをしよう」または「うんこはにんげんのつくることのできる一番小さな山です」について~パチンコ編~

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先日内視鏡検査を受けた。後日出た結果は「逆流性食道炎」だった。

内心大病を案じていただけに、食道炎という診断には少し安堵した。一方で、長期間の薬の服用と2ヵ月後の再度の内視鏡検査の必要性を医者に言われたのは、多少ショックだった。
医者に見せられた食道の写真には、確かに赤く腫れた部位が確認できた。悪性ではないといわれたし、おそらく薬の服用で完治するといわれた。念の為の再検査らしいが、やはり少し不安が残る。
先日の内視鏡検査では私もご他聞に漏れず、大変不快な思いをした。一度経験したことなので、最初の時よりは、勝手がわかる分そんなにナーバスになることはないが、麻酔で朦朧としながら何度もえづいた1回目のイメージが残っているので、できるならばもう二度と内視鏡検査は受けたくなかった。

こちらは素人なので、自分の病状の程度が分からないだけに、医者に言われたら検査を受けないわけにはいかない。再診で何事もないと判明すればすっきりしていいと思うことにする。

その結果を聞いた日は、午後に新宿に行った。紀伊国屋書店でフォトショップの本を買い、その足でスクールの自習室に向かった。
通常の授業で、フォトショップをほとんど習得できなかったので、本で独習しようと決めたのだ。半日しっかり勉強すればある程度は身につくのではないかと考えた。もはやスクールに通った意味がまったくないと自分で認めたかのようだが、実際の話スクールの成果というのはほとんどない。

スクール近くのセブンイレブンでコーヒーとサンドイッチを購入した。半日みっちり独習する気でいたので、コーヒーのサイズはLサイズにした。
小雨が降る新宿を、カップ入りのコーヒーを片手にかっ歩し、スクールが入っている雑居ビルに着いたのが午後の1時過ぎだった。
土曜日は予約なしで自習室を使える。予約なしと言うことは、パソコンを確保できないということはないということだ。土日にスクールに通う真面目な生徒は少ないということだろうか。自習室は飲食禁止なので、とりあえず、席を確保してから上階の飲食スペースに移動しようと決めた。
自習室に入ると予想に反して、室内が活気付いていた。10ぐらいあるPCのうち、6ぐらいは埋まっていた。基本的に生徒は1つ置きに席をキープするので、10のうち6が占有されているということは、要するに満員ということだ。勇気を出して、空スペースを使わせてもらおうとしたが、生来の引っ込み思案がそれをとどまらせた。
さらに、室内の一角が妙に騒がしかったのも、私を萎縮させた。土曜のこの時間は、生徒の質問に答えるために、先生が一人常駐していた。その先生と、自習者の複数名は気心知れた関係なのか、一つの画面を覗き込み、あれやこれやと楽しそうに歓談していた。
その空気が、私に疎外感を与えた。いやな感じがした。そのため私は、一度荷物を持ったまま上階の飲食スペースに行き、頃合を見てまた自習室に戻ってこようとプランを変更した。

新宿まで電車賃をかけてきたのだ。昼飯も買ったし、コーヒーはLサイズだ。参考書も購入した。このままとんぼ返りするわけにはいくまい。
階段で上に上がると、飲食スペースもまた満員だった。
それで私はすべてが面倒くさくなってしまった。そそくさとエレベーターに乗り、1階まで降り、雨が降る新宿の街を、フードをかぶり駅方面に向かって歩いた。
右手に持つ重量感のあるコーヒーカップがわずらわしかった。
独習もできないし、コーヒーも飲めないし、サンドイッチも食べれないし、傘もない。ただ、糞だけがしたかった。

その日、私は糞をひねっていなかった。朝から病院に行き、その足で新宿にきたのだ。当初、本屋、スクール、昼飯、糞、勉強というカリキュラムを組んでいた。それがスクールの混雑で、狂ってしまったのだ。
外は雨で手が凍えるほど冷たかった。どこかでサンドイッチをつまむということもできそうになかった。
私は元来、コーヒーを飲むと糞が出るタイプだ。しかも今は便意がある。コーヒーを飲まなくても出る自信がある。このままLサイズのコーヒーを飲み干したら、うんこが出るのは自明だ。これから電車に乗って帰宅するにしても、途中駅で糞のため降車することになるのは明らかだった。
新宿駅前の交差点で信号待ちをしている間、「スクールに戻り、糞だけしてくるか」などと考えていた。そう思った矢先、背後にパチンコ店があることに気がついた。
「うんこしたくなったらパチンコ店のトイレに駆け込め」
誰かが言っていた。いや、これは私がかつて友人知人同僚クラスメイト先生上司にしつこいぐらい言い続け、そのたびに皆から苦笑を持ってスルーされた人生訓だった。
多くの人が街でトイレに行きたくなったら、飲食店に入る。またはデパートに入る人もいる。公園の公衆便所や駅の中にトイレを探しに行く人もいる。いずれも正解じゃない。
飲食店に何も注文せずに入店して糞だけするのは、少し勇気がいる。デパートというのは清潔度を考えると悪い選択ではないが、建物に入ってからトイレに辿り着くまでに時間がかかる。公園や駅のトイレは汚いし、大体いつも個室が埋まっている。
正解は、パチンコ店のトイレなのだ。
いつの間にか言った本人が忘れていた。そうだ。街にはパチンコ店がたくさんあるのだ。そして、ここは新宿なのだ。パチンコ店の激戦区だ。右を見ても左を見てもパチンコ店だ。要するに、トイレだらけの街なのだ。
パチンコ店のトイレはメリットがたくさんある。まず、なんといっても綺麗なのだ。店内の騒々しさや、パチンコを打つ身なりの汚い人に比べ、トイレ内は信じられないほど掃除が行き届いている清潔空間なのだ。だいたい個室は複数用意されているし、各階ごとにトイレが設置されている。そして、いつも空いている。みんなパチンコやスロットに夢中なのだ。糞をひねっている暇もないのだ。
綺麗で空いているパチンコ店のトイレにはもう一つすばらしい点がある。それは、パチンコ店特有の騒音が、トイレ内にも適度に音漏れしてくる点である。静かな中で糞をすると放屁など様々な音が小水をしている人に聞こえてしまう恐れがある。すると萎縮してうまく排便できない事態に陥る。しかしパチンコ店のトイレは、店内の騒音が「音姫」の機能として働くので、誰に気兼ねすることなく糞をひねれるのである。
清潔さ、空いている、適度な騒音、この3点をもって、パチンコ店のトイレは最強であるといえる。

この日私が入店したパチンコ店は、窓側に景色のいい喫煙スペースがあり、そこでは軽い飲食ができるガラステーブルが設えてあった。私はそこで、糞の前の軽食をとることにした。新宿の街を足早に歩く人々を眺めながら、先ほど買ったコーヒーとサンドイッチで遅い昼食をとった。
その後無事、脱糞。今回は地下1階のトイレを利用させていただいた。想像通りの清潔さだった。無論先客はいなかった。音もまずます。
脱糞後、なるべく早く店を後にしようと階段で1階に戻ろうとしたとき、階段脇にソファー席が設えてあるのが目にとまった。なんとそこにはコミックがあり、誰でも好きに読書ができるようになっていた。本来はパチンコ客向けの息抜きスペースなのだろうが、私のような糞客もやろうと思えば、糞からの読書タイムを満喫することも可能であった。
まさに、至れりつくせりの糞天国というわけだ。
私はさすがにコミックは読まなかった。しかし、いつか暇な休日に、このソファー席に座ってコミックを読みふけるのもありだななどと思った。
外に出ると雨がまだ降っていたが、昼飯を食べ、糞も出たので、気分は爽快だった。唯一、自習をせずに帰宅してしまうことだけが心残りだったが、家に帰ってから勉強すればいいかなと思い、電車を乗り継ぎ1時間後に家に着いたが、自習などせずだらだらと土曜日の午後を過ごしたことは言うまでもない。