弁当の失敗

昨晩いい牛肉が入荷した。
いい肉と言っても、新鮮な肉という意味ではない。またA5の肉など、グレードの話をしているわけでもない。
昨日家人がバーベキューした折に残った味付きの牛肉だ。それが大量に冷蔵庫にあった。
夜のうちに、パプリカ、椎茸、モヤシと一緒に炒めた。味付きなので、塩胡椒などせずにただ炒めた。
今朝起きて弁当を拵えた。おかずスペースの半分に、牛肉の炒め物を入れた。その隣に卵焼き、そして冷食のシュウマイ3個。おかずはその3品でいかせていただいた。
正直最後まで3品目の品に迷ったことは告白しておく。牛肉の炒め物があるので、シュウマイのポジションにはもう少し軽い品を入れるべきなのかもしれないと思った。例えば、ブロッコリーの茹でたのか、漬物か。
しかし逡巡したのちやはり基本に立ち返り、味の濃いおかずをセレクトした。
弁当道を追求し者たちのバイブルと言える書物であるその名も「弁当道」の第1章第3節にある通り、「おかずに迷った時は冷蔵庫冷凍庫にある最も濃い味のおかずを入れよ」の言に従った。
牛肉の炒め物、卵焼き、シュウマイ。我ながらナイスチョイスだと思う。
昼ごはんの時間になり、手も洗わずに弁当のふたを開けた。
その瞬間、僕はすぐに自分の手落ちに気がついた。大仰にいえば、絶望した。
シュウマイに醤油をたらし忘れたのだ。
いまの会社では新参者なので、冷蔵庫に醤油を常備していない。なので、醤油やソースは事前に家で垂らしてくる。それを今朝忘れたのだ。
牛肉の炒め物にばかり気が行き、浮かれていたと言われても返す言葉がない。好事魔多しとはこのことだ。
これは弁当道を追求する者にとっては有るまじき失態と言える。
また、これはシュウマイの軽視とも言える。牛肉とシュウマイの間に優劣はない。これはくだんの「弁当道」にある、「全ておかずは弁当箱の下に平等」の言を無視した証拠といえる。なにが、弁当道を追求するだ。僕はただのレイシストじゃないです。僕は基本に立ち返えらなければならない。
牛肉の炒め物は予想通り美味だった。ご飯がススム君。卵焼きも美味しかった。醤油なしのシュウマイは? 無論美味しかった。しかし、醤油がないのはやはり大きな失点だった。
「弁当道」の第12章第53節にはこうある。「シュウマイは二口で食べるべし。その際白飯は箸で中盛り二口を掻き込むべし」。これは醤油が垂らされていることが前提の議論だ。
醤油なしのシュウマイで、僕は小盛り二口分の白飯しか食べられなかった。
そして最後に、おかずを全部食べたあと、白飯が少しだけ残った。醤油分。
数滴の醤油が、こんなにも大きな悲劇を生む。だから弁当道は奥が深い。牛肉に気を取られて、シュウマイを軽視した結果がこれだ。明後日からまたいちからやり直しだ。
これからも応援よろしくお願いします。