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退職理由2

転職活動 社内ニート
今日はクライアントとミーティングだった。
クライアントとか、ミーティングとかかっこいい。
恥ずかしげもなくこんな言葉使う会社に俺ははじめて勤めたよ。
ミーティングは4時に始まった。クライアント側が4人で、下請のこちら側が3人。こうなると俺は一言も喋らなくなる。
しかし先輩社員がそれを察したのか、ミーティング前に二つほど資料を渡され、軽くプレゼンしろという。
プレゼンって、ただの説明じゃないか。いちいちかっこいいな。
最初の10分ほどで俺の役割は終わった。
それからが長かった。コンセプトを決めることを決めることを決めるための話し合いがひたすら続いた。そんなのクライアント側が決めろよ。お前らの媒体だろ。
俺以外の6人がひたすら喋り続けた。どう考えてもコンセプトを決めるよりも前の段階の話題に思えた。社内で調整してから来いよ。
結局3時間ミーティングが続いた。一般的な会社は無駄な会議が多いと聞いていたが、これか。はじめての体験だ。クリエイティブ業界の皆さんは本当にしょうもない。
決まらないことが最初の数分でわかった。なのになんかを議論していた。誰も何も確定的なことを言わない。決めない。最終的にはその状態がちょっと心地よいみたいな。
俺は2時間ほどして、集中力が切れた。それまでは聞いている振りをしていたが、切れてからはノートにお絵描きをはじめた。週末の予定を書きだした。テントを干そう! 飽きたら指で目を抑え頭を振って、やれやれ疲れたぜみたいなジェスチャーをした。入社ひと月なのに対した新人だぜ。しばらく眉間をぐりぐりして、その後しばらく目を閉じ、またノートにお絵描きをした。対面のクライアントの人たちはどう思っただろう。疲れちゃったのかなと思ったか、なんだこいつと思ったか。
2時間半が経過したあたりで、入電があった。事前にわかっていた入電だ。出れなかった。10分してからまたかかってきた。電話に出てやろうかと思った。
そのとき携帯をポケットから出したので、手の中で携帯を弄んでいたら、LINEが入ったので返信した。
偉大な新人だ。みんなが不毛なミーティングをしている最中にLINEしてる。俺。
ミーティングというのは、不毛だ。みんながその不毛感を負担し合っている。だからきっと妙な連帯感が生まれるのだろう。満員電車に乗ることもそうだ。乗ってる人は乗ってない人を断罪する。無職だ、ニートだ、税金泥棒だと。俺たちが糞みたいなことをしてるのになぜお前は同じように糞みたいなことをしないのだと。
今日のミーティングも俺以外の6人は開始2時間後ぐらいから妙なテンションになっていた。ミーティングハイか。知らんけど。俺は反比例するように生気が抜けていった。そしてLINE。
俺はやる気になれば平均的な社会人になれると思っていたが、それは間違いだったようだ。入社ひと月でミーティング中に疲れてLINEとは恐れ入った。33歳なのに。常識がなにかわきまえているつもりだった。しかしそうではなかった。俺はおそらく社会人として失格だ。LINEを4返信ぐらいしているときに自覚した。
とりあえず退職しよう。一度社会の外側に出て、常識を学び直そう。退職だ。それしかない。