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最強の山めしとは何か

ついに最強の山めしを発見した

最強の山めしとは何か、今も昔も古今東西で活発に議論されてきた話題だ。シンプルなおにぎりから、下ごしらえした食材と調理器具を持って行って山頂で拵える手の込んだ料理まで、多種多様だろう。

私の山仲間も、それぞれ独自の山めしスタイルを持っている。

しかし、「最強」の定義が不明瞭な限り、それぞれが自分の山めしこそ最強であると主張するだろう。

私はこの問題に区切りをつけたいと思う。最強の山めしを定義したいと思う。

先日の茅ヶ岳山行で「最強の山めし」を発見したからだ。これは、万人にとっての最強めし、誰も否定することができない、疑いようのない最強の山めしだと断言できる。

その最強の山めしとは、「下痢便後に食べるおにぎり」である。

それ以上でもそれ以下でもない。

 

茅ヶ岳山行

私は先日の茅ヶ岳山行にコンビニで購入したおにぎり(2つ)とドラッグストアで購入したカップラーメンを持っていった。お湯は山専ボトルに入れて持っていった。

朝8時に登山口となる深田公園駐車場を出発した。今回は単独行だ。

山頂までは、地図に掲載されているコースタイムによると2時間の所要だ。私の歩行速度ならばおそらく1時間半ぐらいで到着するだろうと予測した。

茅ヶ岳山頂に9時半から10時着。昼飯には少し早い時間だ。茅ヶ岳から先に1位時間程度歩くと、金ヶ岳がある。順調に行けば、11時前には到着する。登山の日は朝起きるのが早く、当然朝飯も早い時間に食べることになる。朝11時ぐらいになると空腹も最高潮になる。金ヶ岳での昼飯がベストかな、などと考えながら歩を進めた。

 

前触れのない腹痛に襲われた

歩きはじめて1時間ほどで、腹痛に襲われた。少しすると症状が和らぎ、何事もなかっ

たかのように歩き続けた。途中症状がおさまった時に、ふと、このコンディションでは山でラーメンは食べられないかなと思った。おにぎり一つぐらい食べて、すぐに下山かななどと悠長に考えたりした。

しかし余裕を見せた次の瞬間、また大きな波に襲われた。波が押し寄せるごとに腹部をさすったりしながら、痛みをやり過ごした。何度か大波、小波が押し寄せながらも、大丈夫かなと思いつつ歩を進めたが、5度目の波が襲ってきたときに、これはもうだめかもしれないと覚悟を決めた。

 

前後にトイレはない

登山道にも山頂にもトイレはない。絶望しかない。登っても降りても、間に合わない。万事休すだ。もうなにもかも終わりだと思った。おにぎりもラーメンも捨ててしまいたいと思った。なんで私は山に登っているのだろう。人はなぜ排泄するのだろう。なぜ私は生きているのだろう。いままで迷惑をかけてきたすべての人に謝罪したい気持ちになった。

少し間を置いて、いつもの通り、まずは精神を集中して真摯な態度で自問した。何がいけなかったのか。刺激物は食したか。汗冷え対策は万全だったのか。途中に飲んだ飲料の温度は適切だったか。

そして次に、不意の腹痛に襲われた人間がそうするように、敬虔な気持ちで神に祈った。普段信仰とは無縁だが、下痢便のときは誰もが神に祈る。私も祈るし、君も祈る。神は誰に対しても公平だ。自問し、神に祈り、つかの間の平穏を得た。そして、私は諦めた。これもまた、登山の醍醐味だ。うんこブリブリブリトニースピアーズの時間だ。

 

人生二度目の野糞

山で野糞をするのは二度目だ。一度経験があるので、わりと落ち着いて対処できた。

幸いにしてあたりには他のハイカーはいない。山は、自分が思っている以上に大きく、広く、深い。人でごった返す日曜日の新宿とはわけがちがう。

もちろん、登山道を歩いていると他のハイカーとすれ違うことはある。でも、タイミングを見計らえば、その空間に自分だけしかいないという瞬間を作ることができる。この孤独感を味わうことも登山の醍醐味の一つといえるだろう。自然は寛容だ。いつなんどき誰の下痢便でも、受け入れてくれる。

私は登山道の左側を見た。傾斜はなだらかだが、隠れる物影がない。万一のことを考えて、一応登山道のハイカーからは見えない位置でケツの穴を出したいというのが常識人としての私の最低限のマナーだ。

登山道の右側は急な傾斜だ。しかし、滑落するようなレベルではない。木々や枝にしがみついて20メートルぐらい下ることは可能だ。ちょうどいい具合に高さ2メートル幅3メートルの巨岩があった。まるでこの岩の陰でうんこしろと、茅ヶ岳の山の神が言っているかのようだった。

私は登山道から隠れるように巨岩の裏側に回った。そして迅速にショーツとタイツを下ろし、下痢をした。事前の予測どおり、これ以上ないってぐらいの下痢だった。

持参したペーパーで肛門を拭き、すぐにタイツとショーツを上げて何事もなかったかのように、登山道に引き返した。

 

100%、完璧なコンディションに回復した

すべてを出し切った私は、フィジカル・メンタルともに完全回復していた。身体は驚く軽く、精神は健やかだった。いまならウルトラマラソンも完走できるのではないかと思った。世界中の貧困問題を解決できるような気さえした。

悩み事を解決した私は、順調に歩き続けた。10時前に茅ヶ岳、11時前に金ヶ岳についた。腹の中のものをすべて放出したためか、私は物凄い空腹に襲われていた。

山頂は混んでいた。山頂から少し下りたところに誰もいない、小さくて静かな草原が広がっていた。そこに、座るのにちょうど良い丸太があった。柔らかな木洩れ日と目に付き刺さるほどの新緑の中、私は草の上にザックを放り投げ、丸太に腰掛けた。

ザックの中からおにぎりとラーメンとお湯入りの山専ボトルを出した。ウェットティッシュで手を拭くこともせず、無心でおにぎりの包装を破った。シーチキンマヨネーズ入りのおにぎりを貪り食った。もう腹痛の心配はない。従前に下痢は出し尽くした。そういえば、カレーのような色をしていたな、などと思い出し、すぐに2個目のおにぎり(おかか)の包装を破り、ほとんど噛まないで一気に食べきった。こんな美味しいおにぎりを食べたのは生まれて初めてだった。

その後カップラーメンを食べ、腹がいっぱいになった。食後のコーヒーもいままでにないほど美味しかった。

 

下痢便後のおにぎりこそ最強の山めしである

山頂で食べるおにぎりは美味い。誰しもが認めるところだろう。おにぎりでもパンでもピラフでもラーメンでもうどんでも缶詰でも、なんでも山で食べれば美味い。

しかしとりわけトイレのない山中でものすごい腹痛に襲われるという難局を潜り抜けた後のおにぎりは、何にも勝るほどの最強の山めしである。腹痛に悶えているときは世界の終わりのような心境だが、いざ、意を決して山中で下痢便を放出してしまえば、その後は心身ともに最高のコンディションになる。その完璧なコンディションで、山頂で食べるおにぎりこそが、最強の山めしである。

 

どのようにして山中で腹痛に襲われるか

私は山行の前夜、自宅で担々麺を食べた。とても辛かった。私は辛い物が苦手なので、普段まったくと言っていいほど辛い物を食べない。カレーさえ、甘口意外は食べないことにしている。担々麺など何年ぶりに食べただろう。それも山行前夜に食べるとは、気が触れたとしか言いようがない。しかし仕方がなかったのだ。私は33歳なのに実家暮らしをしている。家人に出されたものは、自分が苦手なものでもなんでも文句を言わず食べなければならない。残そうものなら、家を追われ、路頭に迷うことになる。それほどシビアな環境下で私は日々生きている。担々麺を食すことぐらい、顔色代えずにこなさなければ実家ぐらしはつとまらない。たとえ翌日に山行を控えていても、関係ない。

辛い物が苦手なのに、山行前日に担々麺を食べる。そうすることで山行当日に腹を壊すことができる。結句、山頂で最高のおにぎりを食すことができる。

最強の山めしを食べるためには、どのように腹を壊すかを考えなければならない。そのためには日ごろから、何を食べれば腹を壊すか、どのような環境に身を置けば腹を壊すか、どのような刺激が腹に悪いか、などを自身で日々研究しなければならない。登山を極めるとは、結局のところ自分をいかに追い込むかということである。最強の山めしを食べるのは簡単なことではないが、常に自己研さんに励めば必ずチャンスは巡ってくる。

2015年5月30日、最強の山めしは決定した。しかし誰でもがその山めしにありつけるわけではない。先に述べたように、不断の努力が必要になる。どれだけ自分を追い込めるかがカギになる。山の中で腹痛を誘発するように自身で仕向け、(昼飯前に)野糞をする。言うは易し行うは難しだ。並大抵のことではないが、最強の山めしを食べるために、登山者の皆さんにはぜひ一度トライしてもらいたいものだ。

 

カレーの基本

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げんさんの山めしおつまみ

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