面接後

面接終わった。予定の30分前に会社の前に着いてしまって、時間を潰すためにコーヒーショップへ。

10分前に店を出て、会社へ。5分前にエレベーターホールにつき、エレベーター待ちの間、ネクタイをまっすぐにしようとドアーに写る自分を見て愕然とした。
ノーネクタイ。
ネクタイしてないやんか、自分。
自分というか、俺。
面接なのに、ネクタイしてないことに気がついたが、時すでにお寿司。カバンにネクタイなし。
すぐ近くにコンビニがあったが、もう時すでにお寿司。
俺はオフィスカジュアル系男子なんだと自分に言い聞かせ、面接に向かった。
待合室に迎えに来てくれた女性とあいさつした時、女性が俺の首もとを見たような気がした。ただ、俺の精神は平静だった。心の中で、俺はいつなんどきでもノーネクタイなんだぜ?と自分に言い聞かせていたから。これが俺の常態であり、カジュアルでありながらも正装なんだぜと。正装とカジュアルはネクタイの有る無しじゃないぜ?マインドの問題だぜと俺は女性の脳内にメッセージを送った。
応接室には他に2名いて、面接官は合計3名だった。
各人に、俺はノーネクタイ系の人間であるとテレパシーを送った。
面接官の質問に、俺はうまく答えた。
志望動機、自己PRなどすべて、私はノーネクタイだけれど、と脳内で前置きをしつつ、とうとうと喋った。
先方が事業内容を説明している時も、俺はノーネクタイだけれど御社の業務に並々ならぬ興味を持っています然としていた。こちらからの逆質問も、ノーネクタイ系の求職者ならぬ、鋭い質問を連発した。
一時間後、面接を終えた。
ノーネクタイで面接を乗り切った。終わった時には俺は10年前からこちら一度もネクタイなどしたことがないと言った自信満々のベテランノーネクタイ系求職者といった感じだった。
新宿の街中を歩く仕事終わりのすべてのネクタイ野郎どもが、私のノーネクタイを見て恥じ入っているような気がした。まるで裸体を恥じるアダムとイブのように、自分の首もとに垂れ下がるネクタイがあたかも男性器のように思われて、突如羞恥に襲われてネクタイをむしり取るのではないかと思ったほどだ。
俺はノーネクタイで面接を乗り切った。面接の結果など二の次だ。俺はネクタイなどしない。ネクタイ=男根説だ。あいつらただのふりちん野郎じゃねえか。卑猥なやつらめ。セクハラやないか。露出狂だ。何を見せびらかせてやがる。変態め。
面接でネクタイするなど、逆に、面接官の皆さんに失礼じゃないか。面接官が女性だったら、これはもう警察沙汰ですよ。
ネクタイがいかに卑猥かという問題を提起したところで、今日の敗北の弁はこのへんにしとくけれど、次回の面接でもしネクタイが必要であるならば、僕は世間の常識に合わせて、たとえそれが破廉恥な行為でも、断腸の思いで、首に男根の象徴をぶら下げてもいいぐらいの柔軟さは、あるっちゅーの、だっちゅーの。