エアー内定

昨晩一人で痛飲した。そのとき、なんとなく明日の面接面倒くさいなと思ってしまったのだ。

だからと言って行かないわけにはいかない。月曜日の面接は不首尾に終わった。ならば木曜日の面接で起死回生の逆転満塁Vゴールを決めるのが真の転職家だろう。

しかし面倒くさい。

飲み始めて30分、飲めないウイスキーを30ccぐらい飲みほしていた。すでに泥酔していた。

僕はリクナビネクストを開き、明日受ける企業の求人情報を再度精読した。

いったいなんの仕事をしている会社なのか、僕はこの会社に応募したときに何に惹かれたのか。まったく不明だった。これでは志望動機を述べることすらできない。

面接は木曜日18時から行われ、その後筆記試験もある。となると家に帰るのは22時を過ぎる。僕にとっては深更だ。夜更かしは体に良くない。

よく考えたら、木曜日は有給をとっていない。定時まで働いたら面接時間に間に合わない。前日夜になって、大いなる難題に直面したわけだ。

僕はウイスキーをもう10ccぐらい飲んだ。吐き気がした。こんな体調では翌日の面接でうまく立ち回れるわけがない。コンディション不良だ。プロ転職家として恥ずかしい限りだ。

リクナビネクストのメッセージ画面を開いた。

「他者に就職が決まったので、貴社の選考は辞退させてください」

と入力し、少しの躊躇もせず、送信した。

大丈夫だ。いままでなんどもやってきたことだ。誰も傷つかない。これは僕の十八番なのだ。10年の長い歳月の中で培った、伝家の宝刀を抜いたまでだ。

もちろん、どこの会社からも内定をもらっていない。俗に言う「エアー内定」だ。これが僕のスタイルだ。誰にも何も文句など言わせない。