全部嘘さ

今年の4月からアルバイトになるというのは真っ赤な嘘だ。そんな事実はない。4月以降も、私は今の会社で「正社員」で働き続ける。クビにならなければ。会社が倒産しなければ。本当にアルバイトに降格しなければ。

 

お話を拵えたかった。フィクションを生きることによって、何かしら現実世界でも変化が起きると思った。完全無欠のエアー出勤理論を構築することが目的だった。しかしそんなことはぜんぜんできなかった。残念だ。ひとえに私の力不足が原因だ。

 

それでも、3月末日をめどに何かしたいと考えている。エアー出勤はしない。

よく考えて見たら、いや、よく考えるまでもなく、「エアー出勤」という選択肢は現実的ではない。「サバイバル出勤」などわけがわからない。「エクストリーム出社」は一度ぐらいしてみてもいい。最近TVで始まった「逆向き列車」も素敵な試みだろう。しかしどんな奇抜な出勤スタイルを採ったところで、勤め人の人生がばら色になるわけではない。一瞬だけ、一回だけ、一日だけ、刹那的な楽しさしか味わえない。すべてがネタでしかない。

 

エアー出勤の可能性は無限大だと思っていた。いや、いまでも思っている。理論化することはついにできなかった。いずれ誰かがこの大事業を完遂してくれるだろう。そのときが来るのを、社会の片隅で敗残者の端くれとして、陰ながら見守りたい。

 

今度もしエアー出勤をしたら、私は自殺するだろう。

かつてのエアー出勤は、私が若かったから成せた偉業であったといえる。若くて、無知で、体力があり、すべてをギャグ化できた。自分を嗤うことができた。若かったから、まだ未来があった。

しかし私はいますでに32歳だ。いい歳だ。こんな歳でエアー出勤など危険すぎる。惨めさに押し潰されて、自殺する。

 

冗談はこれぐらいにして、就職活動をしよう。それしかないのだ。私は、エアー出勤を実行するほどの大人物ではなかった。敗北だ。ほんとうにうんざりだ。

 

ひとたびエアー出勤という選択肢を捨て去ると、不思議と体が軽くなった。会社に辞表を出したあとの清清しさに似ている。「辞める」という行為はカタルシスをともなう。私が会社を辞めることを欲するのは、何べんでもあの快楽を味わいたいからなのかもしれない。退職は麻薬だ。今すぐにでも退職したい。そしてカタルシスを味わいたい。

 

とまれ、いま、不思議と転職活動への意欲が湧いてきている。

 

ここ二日間は自分でも驚くくらい、まじめに転職活動に取り組んでいる。会社に出社したら、まずは午前中は転職活動をすると決めた。むろん、本来の仕事をする必要はある。必要というか、仕事をしなくてはならない。職場なのだから。

しかし、一方で転職活動のやる気が漲っている時を逃したくないという気持ちもある。仕事など二の次だ。

 

月曜日に応募した会社から、すぐに面接の段取りについての連絡がきた。幸先が良い。いままではネットからの応募時に、適当な志望動機や自己PRを書いて送っていた。それがいけなった。今回は、かなり真剣に自己PRを書いて応募した。それが奏功したと思う。面接は来週だ。

 

アウトドア関連の業界に興味がある。私も登山者の端くれだ。登山に関連する会社で働こうかと思っている。山と渓谷社、エイ出版、モンベル、パタゴニア、ノースフェイス、石井スポーツ、好日山荘、エルブレスなど、候補はたくさんある。山小屋だっていいだろう。

真面目に働こう。 

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

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