リュックで出勤

また月曜日がやってくる

明日は月曜日だ。楽しかった週末が終わり、暗黒の月曜日がやってくる。月曜日は、30分早く出社する必要がある。毎週朝の打ち合わせがあるからだ。打ち合わせでは各自が受け持っている仕事の進行状況を話す。皆、深夜のコンビニ店員みたいにぼそぼそと話す。そしてだいたい皆言葉少なで、大半は社長がひたすら話す。こんな打ち合わせなど、する意味がないのではないかと思ってしまう。しかし残念ながら毎週月曜日に定例で行われ、明日もいつもより30分はやい9時出勤だ。それがまた日曜の夜を憂鬱にさせる。

 

勤め人の憂鬱

僕たち勤め人はなんとて窮屈な生活を送っているのだろう。

 毎朝決まった時間に起きて、髭をそり、顔を洗い、トーストを焼き、コーヒーを飲み、弁当を拵え、TVの天気予報を観て、朝食を食べ、歯を磨き、糞をして、着替えて、家を出る。

 郊外の自宅から満員電車に乗って、都心の会社に行く。ちょっとした仕事やエアー労働をして、合間にブラックサンダーを食べたり、たまにカントリーマアムを食べたりもする。昼飯には自家製の弁当を食べ、内心、「美味い!」と膝を打ちたくなっているところをぐっと耐え、黙々と食しながら、どうでもいいニュースサイトなどを観ている。

 

 長時間の勤務を終えて、またラッシュアワーにもまれて帰路につく。有給休暇は最低限しか消化することができない。皆が一斉に長期休暇をとるのでどこも混雑している。旅費も高い。これではストレスが溜まっていく一方だ。週末の休みやちょっとした休暇だけでリフレッシュすることなどできはしない。

 

 異国の人たちはそうではないと聞く。

 僕たち日本人の労務者と欧米の勤め人とは、就労環境に雲泥の差があると聞いたことがある。

 彼の国の勤め人たちは、たいへん幸福な環境で働いているらしい。こんなことなら私も学生時分から米語を取得して、外国に移住しておけばよかった。もう私は31才だ。そろそろ32才になる。おじさんだ。これから欧米に働きに行くわけにはいかない。言語を習得するのも難儀だ。

 それならば、日本でできることをするしかないではないか。できることを粛々とこなそう。日本人の勤め人のスタイルがストレスフルならば、かたちだけでも欧米の勤め人のスタイルを取り入れよう。

 

リュックで通勤

答えは、カバンにあった。「リュックだ」と私は思ったのだ。

 よく外国人なんかが、オフィス街を自転車で疾走するシーンを映画で見かける。彼らは、決まってリュックを背負っている。誰一人、ビジネスバッグを手に提げて片手運転してる人はいない。自転車で通勤するならば、絶対にリュックを背負うことになる。あれを、僕たちは取り入れるべきではないのか? 自由とはなんだろう。いや、不自由とはなんだろう。それは枷を嵌められることだ。足枷、手枷。手枷にあたるのがビジネスバックなのだ。ビジネスバッグを持っているから、身軽に往来を闊歩することもできない。手に重い荷物を持って、軽やかにステップを踏めるわけがない。両手はいつだって空手であるべきだ。ならば、リュックだ。異論はないはずだ。

 

 

ならば足枷はなんだ。むろん、革靴だ。革靴で出勤すると疲れが54%増になるという研究結果が、このほどコロンビア大学サラリーマン研究所所長、ハナゲボンバー教授らのチームがまとめた。知っていた、何をいまさら、とほとんどの勤め人は思ったと思う。僕もそう思った。特に外回りすることが多い営業担当者などは、革靴で歩き回ることの弊害を毎日感じていることだろう。これは何も外勤者だけが感じていることではない。内勤者もまた、オフィス内で革靴の不快さを日々感じている。だから、職場で許されている場合は、オフィス内でだけサンダル履きの人たちもいる。そのほうが疲労やむくみなどが軽減されるのだ。革靴をやめて、スニーカーや運動靴、サンダル履きで出勤することが、勤め人の幸福度を平均23%向上させるという結果が、このほど内閣府の幸福度研究センター室長、下呂田シッ子氏らのグループが発表した。

 

このように、カバンと靴を変えるだけで、労務者の幸福度が平均して150%も上昇するのだ。ならばこれを取り入れない手はない。近年のクールビズでネクタイを着用しない企業が増えているので、ネクタイ不要論は、世間に浸透している。スーツ着用という悪しき習慣は、まだ日本社会に残り続けているが、これに関しても今、僕や友人の学者連中や無職者を中心としたワーキンググループで調査・研究を進めており、早晩研究結果として『山と渓谷』に論文を提出する予定だ。その論文が世界的に話題になれば、おそらく、日本の労働環境からスーツ着用の文化が根絶されるはずだ。乞うご期待と言ったところだ。

 

 さしあたり僕がするべきことは、カバンを手提げタイプのビジネスバッグから、リュックサックに変えるということだ。そして次は、ビーサンでの出勤だ。出勤スタイルを少しずつ変化させていくのが肝要だ。1アイテムずつ変えていけば、まわりの人に気が付かれるリスクを軽減できる。気が付いたら、リュック、ビーサン、短パン、シャツのラフなスタイルで出勤していた、なんてことになるはずだ。そうすればいまの窮屈で不自由なサラリーマン生活とはおさらばできると僕は少し思って、その後なんだかとてつもない虚無感に襲われたなぁ。