花子隊をとらえた_鳳凰三山⑧

登り始めて40分ほどで、花子隊を射程に捉えた。花子隊のパーティは総勢4名。先頭に35歳ぐらいの男性、その次に花子、その後ろに花子と同年代と思われる2名の女性がついて歩いていた。
 私の歩行スピードは無駄に速い。一つは、健脚だからという理由もある。しかしそれ以上に、独りで登っていることに対する恐怖感が私の歩行を否応なく速める。速く登って、早く降りたいという強い信念で登っているのだ。ガイドブックに書かれているタイムが8時間ならば、6時間ぐらいで登り切りたい。8時間の苦行よりも6時間のほうが負担が軽いのは理の当然だ。
 
私は一言二言花子と言葉を交わし、そそくさと頂上を目指した。彼女らが泊まるのは鳳凰小屋で私が泊まるのはその先にある薬師岳小屋なのだ。先を急がなくてはならない。登山の鉄則として、15時前には小屋に到着しなくてはならないらしい。
 そもそも私が鳳凰小屋ではなくて、薬師岳小屋に投宿すると決めたのは、ネット情報で鳳凰小屋の評判が著しく低かったからだ。山小屋に勤めている人間は嫌な人ばかりとは良く聞く話だが、鳳凰の従業員もご多分に漏れず、ネットでいろいろと悪評が立っていた。鳳凰に比べて薬師の方は、あまり悪い書き込み・口コミがないように思われた。それに加え、私は日曜日の夜に横浜でフットサルをする予定があったため、2日目の歩行時間を短くするために、薬師岳小屋の方が都合がよかった。
 
 青木鉱泉から鳳凰小屋までの道のりは、予想よりもきつかった。事前に目を通した登山者のブログでは、鳳凰三山は割と楽な道程と書いてあったが、それほど楽ではなかった。
 途中、南精進ケ滝、鳳凰の滝、白糸の滝、五色の滝を見ながら登った。これらの滝は、分岐点で滝の方に向かい、滝を見てからまた元の分岐点に戻ってこなければならない。そのため、「寄り道」になるためコースタイムが余計にかかることになる。荷物を分岐点に置いて、滝を見に行く人が多かったが、私は山賊に荷物を持って行かれることを恐れ、荷物を背負って滝を見に行った。山では何が起こるかわからない。私ぐらい細心の注意を払うべきだと思うが、ほかの登山者はそれほどナーバスになっていなかった。これから鳳凰三山に行く人は山賊には注意してしすぎることはないと思う。