いやいや、決行することに_鳳凰三山④

週末の三連休を前にしても、私はなかなか鳳凰三山への単独行に行く決心がつかないでいた。月曜日、火曜日、水曜日、木曜日と過ぎて、金曜日になっても結論が出ずにいた。
天気予報を見ると、週末の山梨は晴れそうだった。せめて雨の予報ならば行かずに済むと思ったが、天気に見放されたならば仕方がないと思い、私は夕方に薬師岳小屋に電話して、翌日の宿泊予約をしようとした。しかし電話に出た女性から予想外の言葉を聞かされた。明日の宿はもうすでに予約で一杯なので、これ以上受け付けられないというのだ。私は、思わずガッツポーズをして、さも残念そうな声音で女性に礼を言い、電話切った。これで単独行に行かなくても済むと思ったら、体が軽くなった。

18時に仕事を終え、会社を出ようとしたとき、花子が、明日の山はどうするのだと聞いてきた。私は決めてないと言った。しかし内心は中止ということで心を決めていた。花子は、もし明日山に独りで行って、寂しくなったら自分たちが宿泊する鳳凰小屋に来ればいいじゃないかという意味のことを言った。単独行に二の足を踏んでいるのは、独りで寂しいからであるということを、花子は見透かしていたようだ。私は30歳で、独り立ちするには若すぎるほどではない。花子に気を遣われ、私の心に火が付いた。

会社を出ると再度、薬師岳小屋に電話した。すると、電話口に出た男性が、キャンセルが出始めているから予約を受け付けられるといった。私は少し残念に思わないではなかったが、宿の予約をした。これで、明日の鳳凰三山、単独行が決定してしまったのだ。私は肩を落とし、帰路に着いた。