単独行に、お母さんはいない_鳳凰三山②

決行2週間前には鳳凰三山行きを決めてはいたが、日が経つごとに、登山への情熱が急速にしぼんでいった。
なによりも、「独りで行く」ということに対して気後れを感じ始めたのだ。
単独行は危険だ。
何が危険かといえば、まず、登山口までの車の運転が危険だ。私が住んでいる横浜の閑静な住宅街から登山口である、山梨県の青木鉱泉までは車で3時間半ほどかかる。朝7時に登り始めるとしたら、3時半より前に家を出ることになる。そして3時間半も一人で車を運転する。誰とも喋らず、もちろん途中で代わってもらうドライバーもいない。加えて、私は運転が苦手で嫌いでおまけに下手なのだ。バックでの駐車などという芸当は50年練習してもできそうにない。しかも今回は、韮崎ICから青木鉱泉までの山道の運転もしなければならない。そんな危険運転をするぐらいなら、登山など行かない方がいいのではないか、私はそう思った。

運転以上に厄介なのは、もちろん独りでの登山だ。独りでの登山には、常に危険が付きまとう。特に、山中で怪我や体調不良で動けなくなったとき、誰の助けも得られない。道迷いの危険性もある。だからガイドブックには、基本的には初心者は複数で登るべきだと書いてある。山で死にたくない。誰だってそうだ。勇んで単独行に行って、遭難死するぐらいなら登山なんて行かない方がいいのではないか、私はそう思った。

運よく道に迷わず、怪我もせず無事に小屋にたどり着いたとしても少しも困難な状況は変わらない。一人での小屋泊は、あまりにも寂しすぎるのはなかろうか。夜飯を一人で食べ、自由時間を一人呆然と星空を眺め、ブルブル震えながら煎餅布団にくるまり、寝る。朝起きるタイミングもわからない。誰が起こしてくれるわけでもない。お母さんもいない。すべて自分の判断で行動しなくてはならない。厄介だなと私は思った。単独行は、あらゆる意味でリスキーだなと思った。私のメンタルでは単独行は極めて厳しいものとなる。今回の山行は止めにしようかなという気持ちが固まりつつあった。

山と高原地図 北岳・甲斐駒 2015 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 北岳・甲斐駒 2015 (登山地図 | マップル)