第7期転職活動期

漠然と、そろそろかなと思った。
今の会社に入社して半年が経過した。仕事には慣れた。同僚との関係も良好だ。生活のリズムも掴めている。すべてが穏やかに推移している。だいたい、そんな時、私は旅立ちたくなる。職場が安息の地となりつつあるとき、このままじゃいけないと思ってしまう。ここではないと思ってしまうのだ。そしてPCを開き「リクナビNEXT」や「マイナビ転職」で職探しを始めてしまう。幸いにして、転職サイトのIDは前回登録したものが生きている。いつものように、また転職活動を開始すればいいのだ。

南米旅行の計画は雲散霧消した。旅行資金がない、行動力もない、計画も曖昧なうえに、よく考えたら南米など行きたくないということに気が付いてしまったのだ。一種の現実逃避だったのだ。数十万円、あるいは百数十万円もかけて現実逃避するなど馬鹿げている。

海外旅行など、一時の逃避に過ぎない。そんなことをしても、帰国したときに現実に直面し右往左往するだけに決まっている。そんなことよりももっと根本的に、今の現実を直視しないようにするには、やっぱり転職が最善の策のように思われる。今の生活が嫌ならば、辞表を提出して次の職場に移ればいいのだ。そうすれば生活が一変する。新しい未来が切り拓ける。例え収入が減少し、今以上に悪環境の職場になったとしてもきっとそこには何か新しい希望や目標が生まれるはずだ。転職に失敗しても、少なくとも次の職場こそユートピアのはずだという転職意欲が刺激されるはずだ。そういった刺激こそが生きる糧になるはずだ。

私は今、出版社に勤めている。出版社に勤めるのはこれで3社目だ。大学卒業後、他にITが1社、リサーチが1社、卸が1社の計6社ぐらいに勤めた。どれも短期間で辞めた。三十路を前にして、最近よく感じる。何も習得していない、と。
編集の基本すらわからない、校正も適当だ。デザインや組版の知識もゼロに近い。出版流通や販売のことも良くわかっていない。書店営業もできない。驚嘆するほど、どんなスキルもみについていないのだ。どの会社でも中途半端にしかやってこなかった。腰を落ち着けて学ぼうという気概がなかった。A社からB社、B社からC社に入社しては退社して入社しては退社してきた。それは「見る人」が見れば、勇気ある行為として礼賛してくれただろう。しかし、残念ながら「見る人」はまったく見てなかったのだ。そもそも「見る人」など存在しない可能性も指摘しておきたい。私は己の華麗なステップに一人酔いしれていた。踊り疲れてもだれも介抱してくれないのだ。あと先考えずに一人で満足感に浸っていた。自分の吐しゃ物の上で酔い潰れているサラリーマンと同じだ。自業自得。そして、さらに厄介なのはどうも私はそのような状態を悪くないと思っているらしいのだ。というのも、会社を変わるごとに新入社員になるということで、ルーキーの特権ともいうべき、「責任を負わなくてもいい」ことに味を占めているらしいのだ。私はいつも、酔い潰れている「しょうがない私」に手を差し伸べてくる優しい駅員さんを待っているのだ。

ルーキーでいられる期間は短い。会社にもよるが、私の経験では6カ月ぐらいだと思う。それを過ぎたら、一定の結果や責任を負わされるので気をつけた方がいい。そうなったら、一目散に移籍を考えた方がいい。どこの会社もニューカマーには優しい。その優しさを存分に味わうのも転職の楽しみの一つと言って言えなくもないだろう。無論、そんなことはまったく言えない、ということも言えることは指摘しておきたい。