アメーバピグ

転職先がなかなか決まらない。今の職場に見切りをつけて早半年が過ぎた。いまだに1件も内定が取れていない。最近は酷暑が原因なのか、就職活動に全く身が入らない。週日は主に仕事に忙殺され、週末は主に無為に過ごしている。就職活動をやっていないこともないような気がするが、どうも芳しい結果が得られない。手ごたえがないとモチベーションも上がらない。暑さで面倒臭くなって一か八か私を採用してくれるような会社は現れないものか。
私は、20代のすべてを就活に捧げてきたといっても過言ではない。大学を卒業してからほぼ毎年就活をしている。20代の半ばはもっと熱い就活生活を送っていたような気がする。応募、応募の毎日だったような気がする。私も年をとりすぎたのだろうか。就活に対する興味が減退してしまったのだろうか。
私はあのころの自分が何を考えていたのかを思い出すべく、かつての日記を読み返した。そこに記述された内容を見て私は驚嘆した。2007年11月21日の日記にこう書いてあった。「待てど暮らせど内定の連絡が貰えないことに焦りを感じ始めていたが、よく考えたら1社も面接を受けていないことに気が付いた。」
3年前ということは私が25歳の時だ。25歳は確かに若い。しかし…。かつての私はここまで愚鈍な人間だったのか。1社も応募していないのに内定をもらえると思っていたのか。超絶的な楽観主義だったのか。私は呆れてしまった。と同時にある事実に気がついた。なぜ今もって私に内定の連絡が来ないのか納得した。まだ1社も応募していなかったのだ。かつての自分と同じ過ちを犯していた。私はあれから何も学んでいなかったのだ。しかし気落ちしていても仕方ない。内定がもらえない理由はわかった。どんどん応募すれば、結果も付いてくるはずだ。私は、即座に「マイナビ」で求人検索しようとした。しかし気がつくと、私は「アメーバピグ」の釣りゲームに興じていた。それならばと次は「リクナビネクスト」で検索しようとした。しかし気がつくと今度はYシャツにアイロンをあてていた。7枚。
最近はずっとこんな感じだ。就活をしようとすると途端に別のことがしたくなる。私は気分転換にランニングをしようとジャージに着替え、ランニングシューズを履いて川に向かった。最後には体力がものを言う。フィジカルコンディションを整えてから就活に臨む。
鶴見川沿い30分間走った。いい汗がかけた。帰宅後シャワーを浴び、グレープフルーツジュースを立て続けに3杯飲んだ。うまかった。
スッキリしたところでついに就活する気が起きた。これまでになく活力がみなぎってきた。しかしここでアクシデントが発生した。激烈な腹痛に襲われたのだ。私はトイレに駆け込んだ。数分後、私は自席につきようやくリクナビネクストのサイトを開いた。しかし私はここでしばし考え込んでしまった。はたしてこのような最悪なコンディションの中でよい求人をみつけることができるのだろうか。今はあまりにもコンディションが悪すぎる。折角ならベストな状態で検索したい。見切り発車はしたくない。こんな炎天下の日にランニングなどしてしまったこと、ジュースを3杯も一気に飲んでしまったことを悔いた。己の見通しの甘さを責め立てた。
私は内心忸怩たる思いで、リクナビネクストのサイトを閉じた。そしてまた「アメーバピグ」の釣りゲームをした。釣果は、サワラ2匹、シラウオ1匹、シシャモ2匹、マダコ1匹だった。いずれも、完璧に無価値なものだった。
今日も1社も応募しなかった。内定への道のりはまだまだ遠いようだ。