27歳男、リーマンショック後にエアー出勤をする㉙

『前回までのあらすじ』
p( ̄o ̄)qオッ!!v( ̄ε ̄)vツー!!




高校生の時、数学のテストでわからない問題に直面したら解答欄に「0」あるいは「-1」あるいは「1」を記入した記憶がある。3つのうちのどれかを解答しておけば正解する確率が高いことを高校3年間で学んだ。
採用試験で「国内に温泉旅館はいくつあるか」という出題があった。このような難問に答えられるのは一握りの天才だけであろう。小さな編集プロダクションの採用試験でこのような難問が出題された場合、企業側は正答など期待していない。答えられなくて当たり前だからだ。だとすればこの問題に関しては、勘で答えるしかない。しかし155,646軒とか48,542軒とか777軒などといったでたらめな数字では当たるはずがない。だとすれば高校生の時に学んだ「0」「-1」「1」の法則を使うしかない。3つのうち、-1は除外される。では「0」と「1」のうちどちらを採用するか。ここで私は、閃いた。
1. 横浜市緑区には温泉旅館がない。
2. その隣の青葉区にも温泉旅館はない。
3. そのまた隣の都筑区にも温泉旅館がない。
という風に進めていけば、日本中のすべての町に温泉旅館など存在しないことが推論できる。「日本には温泉旅館など1軒もありません」というのが答えとしてふさわしいように思う。どや!

と思って私はむなしくなった。この答えはあまりにも無理がありすぎる。日本国内に、温泉旅館は確かに存在する。私は毎年11月にジョギングクラブの春夫君と健太郎君の3人で「河口湖マラソン」に参加している。その時に泊まっている宿は、確かに温泉旅館なのだ。だとすれば日本国内には少なくとも1軒以上の温泉旅館が存在している。また過去に泊まった温泉旅館を数え上げてみると、5軒以上は存在していることが経験的に証明されている。だとすれば日本国内には5軒の温泉旅館があるのだろうか? いや日本国には1億2千万人の国民がいる。だとすれば5×1億2千万=6億軒? いや外国人も泊まりに来ているはずだから・・・・じゃあ・・・・わからない。もはや頭は爆発寸前だった。
私は途方に暮れていた。私は過去に温泉旅館に泊まったことがある。よって日本には温泉旅館が存在する。つまり温泉旅館の数は「0」ではない。また過去に5か所以上の温泉旅館に泊まったことがある。つまり国内に存在する温泉旅館の総数の下限は5である。
そう、日本には5以上の温泉旅館がある。では上限は? 私は自分が知っている統計的数値を頭に思い浮かべた。しかし私が知っている数字などたかが知れていた。私はほとんど何も統計的な数値などしらない。いささか気が滅入った。私はものを知らなさすぎる。私が知っているのは日本の人口ぐらいだ。1億2千万人。一つ言えるのは、すべての日本国民が温泉旅館を経営しているわけではないということだ。だとすれば上限は1億2千万軒に設定できないか。できなくてもいい。そうしよう。厳密にいえば、上限が1億2千万である根拠はない。現実的にいえば日本国内に1億2千万軒以上の温泉旅館があるはずがない。しかし正確な数字を知らない私には、「日本には1億2千万軒以下しか温泉旅館がない」ということを言いきれない。しかしそんな細かいことはこの際放っておく。
日本にある温泉旅館の総数をxとした場合、次のことが言える(というか強引に言う)。

5<x<120,000,000


『前回までのあらすじ』
(/へ)いや〜ん




「私の解答」
日本にある温泉旅館の総数をxとする

私は過去に5軒以上の温泉旅館に泊まったことがある・・・・・?
またすべての日本国民(1億2千万人)が温泉旅館を経営しているわけではない(2軒以上経営している経営者はいないと仮定)・・・・?
?、?より
5<x<120,000,000・・・・・・・?

国内の労働人口は6千万人である・・・・?
日本国民の平均年収は500万円である・・・・?
宿泊料は1泊当たり1万円とする・・・・?
非労働者は金銭的余裕がないので宿泊旅行に行かない・・・・・・・・・・?
労働者は1年に平均1回宿泊旅行に行く・・・・・・・?

?〜?より
旅館等宿泊施設従事者が平均所得である500万円を稼ぐためには、旅館等宿泊施設従事者1人あたり500名の宿泊客を必要とすることがわかる

このことから、日本における旅館等宿泊施設従事者の数は
60,000,000÷500=120,000人であることがわかる

120,000人のうち、半数以上は温泉旅館以外の宿泊施設すなわちシティホテル、カプセルホテル、ラブホテルに勤めていると推測する
よって温泉旅館に従事している人数は120,000人÷2=60,000人である・・・・・・?
また、1施設当たり平均5人以上は従事していると仮定する・・・・?

?、?より日本国内にある温泉旅館の総数は
60,000人÷5=12,000軒である

A.日本国内には約12,000軒の温泉旅館がある


私は、以上のように国内にある温泉旅館の総数を12,000軒と計算した。



男前である。
非常に男前な計算だと思う。上記の計算方法には突っ込みどころがたくさんある。しかしそれはそれで良い。私はその突っ込みをすべて受け入れる準備がある。なぜなら私は男前だからである。私に非があろうが無かろうが私はすべてを受容する。
私は科学的な証明方法を是認しない。科学万能主義者を否定する。彼らには感情というものが決定的に欠けているように思うからだ。
その点どうだろう、上記の計算は男前であるだけでなく、人間味すら感じさせる。ともすれば独りよがりととられかねない「仮定」「平均」の強引な導入についても、私は好意的に評価する。私はそこに人間の弱さを見る。人は、弱い。人は自分を正当化するために横車を押す。しかし注意深く観察すると、そこには含羞のようなものも見て取れる。彼は強引な自己正当化を試みつつ、恥じらいを感じている。その恥じらいの精神に品性を感じた人もいるだろう。
また上記計算には、間違いや勘違いを恐れずに論を進めていく揺るぎない信念と自信も見て取れる。一意専心に計算に取り組む姿に私は感動を覚える。人の温もりがあり息吹がある。たとえ大きな過ちを犯していようとも、そこには科学では説明できない確かな「存在」がある。そこには確かに「私」がいる。

私は、日本における温泉旅館の総数を算出した。それは間違っている数字かもしれない(事実間違っていた)。しかし計算により得られた解答など瑣末なことだ。はじき出された数値が間違っていようと正しかろうとそんなことはどうでもいい。上述した私の計算式は美しい。強い意志を感じさせ、また同時に寛容さも感じさせる。男前な計算。そう、私は確かに男前なのだ。誰が何と言おうが、私の解答こそが正答なのだ。
もし私を雇わなかったとしたら、採用担当者は愚者であるといえる。偽善者でもある。今、あなた方の見識が問われている。