27歳男、リーマンショック後にエアー出勤をする㉓

『前回までのあらすじ』
就職活動を始めて半年が経過した私であったが、いまだに就職先が決まらずにいた。就職活動が長引くにつれて、徐々に倦怠感や脱力感に蝕まれていた。




半年前の一月、私は無職であるのにもかかわらず、毎朝スーツを着て7時10分に家を出て行くあてもなく街をほっつき歩いていた。自宅から歩いて1時間弱かかるニュータウンの駅に向かい、駅中にあるマクドナルドで120円のコーヒーを飲み2,3時間ほど読書をして時間を潰していた。昼前に地下鉄に乗り、桜木町まで行く。野毛にある中央図書館やイセザキモールにある漫画喫茶、関内にあるコーヒーショップなどでさらに時間を潰す。そして十分に時間を潰せたか、あるいはそれ以上時間を潰すと精神が錯乱する一歩手前の段階で、地下鉄に乗り込みニュータウンの駅に帰る。駅周辺のファミレスやファストフード店などでさらに時間を潰す。そして19時ごろになったら、朝来た道を戻って帰宅する。そういう生活を送っていた。

あれから半年が過ぎた。季節は、冬から夏に移り変わった。当時街を彷徨していた時は、厚手のコートを着込んでいても、身体の芯から冷え冷えとするような寒さを感じていた。長時間歩き続けていると、つま先や手の指先がかじかんでくるほど寒かった。鼻が赤くなり、知らず知らずのうちに鼻水が出てきた。半年。6か月。長い歳月だ。

半年のうちに、ハローワークやインターネットの転職サービスなどを利用し、165社(2009年7月19日現在)の求人に応募した。毎週、リクナビやマイナビ転職のサイトを閲覧している。最近は各社求人の本文を読まずとも、求人の写真やデザインなどを一べつしただけでその会社の事業内容、社風、ブラック度などを理解できるところまできた。毎週掲載されている求人や求人広告にきれいな茶髪のおねえさんが載っているもの、若い社員たちが肩を組んで破顔一笑しているものは、ほぼ間違いなくブラック企業だ。そのような求人を1つずつ消去していくと、手元に残る求人はほとんどなくなる。そしてまた次回のサイト更新日まで首を長くして待つ、という日々が続いている。
その連続で今日まできた。しかし6か月間、なんの収穫もなく過ぎたわけではない。途中、内定をもらった会社もあった(条件面で折り合わず)。週2,3社のペースで面接を受けていた時期もあった。集中して求人サイトを閲覧し、条件が自分の希望と少しぐらい違っても、とりあえずは応募してみるといったような気概のある求職者であった時期もあった。
しかし今は違う。あの頃の私はすでにいない。毎日退廃的な生活を送っている。朝は一応7:00に起きる。これは社会に復帰したとき、スムーズに順応できるように少なくとも朝は早く起きるようにしているためだ。
朝食を食べ、ブラックコーヒーを飲む。パソコンの電源を入れ、いつも閲覧しているサイトをチェックする。友人のブログ、スポーツ紙、一般紙など。最後に「しょこたんブログ」を入念に読み込んで、その日の作業を終える。9時には完全にフリーになる。以前、東京で一人暮らしをしていたときも今と同じように転職活動をしていた(私は年がら年中転職活動をしている)。その時は、家に一人でいるため、昼ごろから「iichiko」を飲みつつ、プレイステーションをやり、日が暮れたら夕飯を食べに外に出るという素敵な生活を送っていた。酒は百薬の長であり、無職者の悩み事を一時的に緩和する効果がある。しかし今は実家暮らしのため、アルコールに逃げることはできない。

半年間ずっと高い志をキープし続けるのは困難だ。現在の私が好例だ。就活どころか毎日の生活も停滞している。mixiの日記もサボりがちだ。今もこうしてmixi用の日記を書いているが、以前ほど熱心にはなれない。告白すると、この文章も右手の人差し指一本で書いている。左手の人差し指は鼻の穴をほじっている。そしてBGMにはAKB48の音楽をかけている。日記が進まなくなってきたら、「しょこたんブログ」をニヤニヤしながら閲覧している。完全に人生の落伍者である。

この状況を打破したいと思った。初心を取り戻すことが肝心だと思った。精神・肉体を極限まで追い込んだ、「桜木町〜関内」でのあの冬行軍を思い出した。あの地に行けばまた気持ちが盛り上がるのではないか。あの頃味わった惨めな記憶を呼び起こし、その気持ちをばねにして、再度求職活動に注力できるのではないか。行こうと思った。久しぶりにあの街を歩こう。そして初心を取り戻し、再スタートを切れるようにしよう。