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27歳男、リーマンショック後にエアー出勤をする㉒

エアー出勤 2009年エアー出勤

『前回までのあらすじ』
無職歴が半年に達した私は、サイバーエージェントが提供している二次元仮想空間サービス「ピグ」で遊び呆けるなど、現実逃避の毎日を過ごしていた。




誤算だった。まさか転職活動がこんなに長引くとは思ってもみなかった。今まで何度か転職を経験したが、活動期間は長くても2か月ほどだった。それが今回は半年を過ぎても、全く決まる気配がない。巷間では、不況、派遣切り、雇用止め、雇用崩壊だなどとマスコミが喧伝しているが、私には関係のないことだと思っていた。私には無関係なのだと。しかし違った。不況の波は、すべての求職者に影響を与えている。経済の停滞が及ぼす影響は予想以上に酷い。総務省が6/30に発表した各種統計データによると、2009年5月の完全失業率(季節調整値)は5.2%で、前月に比べ0.2%の上昇。完全失業者数は347万人(私を含む)で1年前に比べ77万人も増加している。また、就業者数は6342万人(私を含まない)で1年前に比べ136万人も減少しており、これは過去最大の減少幅であるという。このような経済指標からもわかるように、今現在、社会に出て正社員で働いている人は、人生の勝ち組であるといえよう。優良企業に所属している人たちは夏のボーナスをかっぽり貰うことだろう。そのような人たちは夏休みに出かける海外旅行の予定を立てるなど充実した毎日を送っていることだろう。朝は眠い眠いとぼやきつつも、出社したらすぐさまお仕事モードに切り替え、日々の煩雑な業務をスピーディーかつ正確にさばき、お昼になれば社食で美味とは言えないまでも栄養価の計算された安価な定食で腹をいっぱいにしていることだろう。夜は、仲間とビアホールに繰り出し、異性との交遊を図るなど酒池肉林の毎日を送っていると聞く。全くうらやましい限りだ、と思う。
一方で、私はというと先日受けた出版社(M社)から不採用の連絡を受けるなど相変わらずの無職生活を送っている。不採用は、計算外だった。M社の選考は、最初に筆記試験があり、その後課題作文、一次面接、二次面接、三次面接と進む予定となっていた。筆記試験を余裕で突破した私は、軽い気持ちで課題作文を書きあげた。作文などは内容よりも、勢いのようなもので簡単に突破できると高をくくっていた。大いなる誤算だった。
不採用に至った理由はわからないでもない。提出した作文は、あまりにもふざけ過ぎていた。与えられたテーマは「私」というものだった。受験者は「私」というテーマにそって、学生時代や社会人時代に積んだ経験をもとに自己PRしなければならない。忍耐力、理解力、行動力、社交性、努力、対応力、統率力、気配り、冷静さ、知力、適応力などをアピールし、採用担当者に自分を売り込む。「私」の属性を書き連ねることで、より深く自分を知ってもらい、採用担当者に会ってみたいと思わせなくてはならない。受験者は提出期限ぎりぎりまで必死に考え、何度も書き直して作文を執筆したことだろう。一方で私はどうだろう。テーマが「私」とわかった時点で、「わたし(私)」と「わがし(和菓子)」を勘違いして文章を書くというくだらないアイディアを案出していた。また「わたし」と「たわし」を混同するという考えも悪くないと考えていた。さらに「私」の事には一切触れないで、ヨーロッパサッカーの移籍市場の動向や近所の図書館の蔵書に対する不平・不満を書き連ねるといった意味不明な文章も考えていた。さらに作文を読むであろう採用担当者に向けてドッキリを仕掛けようともしていた。書き出しはこうだ。「このようなかたちであなたに手紙を書くとは夢にも思いませんでした。私はあなたの本当の息子です。・・・・会いたいです!一次面接で」。
しかしどれもくだらないと思った。くだらない、つまらないと思い悩み続けていたら、課題の提出期限の前日になってしまった。いつものパターンだ。私は、大体いつもぎりぎりになって焦りだす。基本的に、ぎりぎりまでやらない。これでは、他の受験者にかなうわけがない。M社の採用試験に落ちたのも道理だ。私は、今回の不採用でいろいろ学んだ。物事には真面目に取り組むべきだ。このご時世、少しでも可能性のある求人に対しては、ふざけず、真摯な態度で臨みたい。そのような姿勢が面接官にいい印象を残すかもしれない。今日から心機一転して頑張りたい。下記に、M社に提出した作文を掲載しておく。就職活動中の方々には、今後活動を進めていく上で、何かの参考になればいいと思う。

●テーマ:私、字数:800字以内
興味がある、関わりがある、馴染みがある、具体的である、といったようなテーマについて語ることは比較的容易である。しかし抽象的であり、人生においてあまり深く関わったことのない対象について語ることは、困難である。
今回与えられたテーマは後者に属するものであると思う。それは私に限らず、大多数の受験者が感じていることであろうと思う。しかし不平はいっていられない。選考に残るためにも語れるだけ語らなくてはならない。
このテーマを聞いたときに最初に頭に浮かんだのは、「涼」という言葉だ。ぷるんとした質感と向こう側まで透けて見えるほどの透明感が、見る者に涼を与える。見て楽しむというのは粋なものだ。ただ甘味を味わい、糖分を吸収するだけではあまりにも即物的で、もったいない。まずは見て味わうのも、”日本人的”な美意識を表している。私はそれほど頻繁にくず切りや水ようかんを食べるタイプの人間ではないが、それでもたまにお茶うけとして食す機会はある。好きか嫌いか問われれば、「好きかも」と答えるだろう。とここまで書いて気が付いたことがあって、それは今回の作文テーマが「和菓子」ではなく「私」であるということだ。とんだ勘違いだ。獏とではあるが、なんかおかしいとは思っていた。手直しが必要だ。しかしここまで書いてしまったし、最初から書き直すのは手間と時間がかかる。よって、これはこれで提出したい。内容的には「私」の話はほとんどしていないが、それは良しとしよう。なぜなら、文体にこそその人の精神が宿ると誰かがいっていたから。もしこの文章を読んで、私について何もわからないというのであれば、一次面接でさらに詳しい自己紹介をする準備は、これはある。
という考えは通じるだろうか。
和菓子だけに甘すぎですか!ってやかましいわwwwwwwwwwwwwwwwww
お後がよろしいようで。