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27歳男、リーマンショック後にエアー出勤をする⑤

『前回までのあらすじ』
就活中の私は、今日も元気にエアー出社していた。


エンジャパンからC社にエントリーした。
リフォーム業界での就業経験は皆無だが、ここで私の新たな才能が開花しないとも限らない。
どうも私にはその芽があるのではないかと漠然とした期待もなくはない。まあ根拠はないのだが。
この求人に惹かれた理由は他にもある。一つには就業場所が自宅から近いということ。一つには給与が非常に高いということ。求人広告によると、月給は50万から200万であるという。もちろん実績により高低があるのだろうがそれにしても魅力的だ。
リフォーム業界というと、昨今の一部業者による悪質な営業活動によりイメージが悪化し、業界全体が悪者のように見られている風潮がある。しかし、すべての業者がそうであるというわけではない。顧客のために、真面目で親切な対応をしている会社もたくさんあるだろう。どの業界にもブラック企業というのは存在する。一部だけ見て、すべてを判断する人間は愚者である。私の見立てでは、C社は非常に優良な会社であるように思われる。ユーザーの側に立ってものを考えているように思う。、自分たちの私欲だけを追求するような狭い視野は持っていない。一般家庭の住居をより住みやすくリフォームすることで、安全・安心な居住環境を実現し、広く地域社会に和平と安息をもたらすスペシャルホワイトなS級企業であると思う。
根拠はないが私はそう思う。

エントリー翌日、携帯電話に人事担当者から入電があった。
早速のご対応まことに感謝した。
人事男性が言った。
「リフォーム業界の経験はおありですか」
「ございません」
「営業の経験は」
「ほとんどありません」
「当社は基本的に飛込みでの営業となりますが、あなたは飛び込み営業とはどんなものだとイメージしていますか」
「えっと、住宅街を歩いて、各家庭の呼び鈴を押して、こちらの素性や訪問意図を述べて玄関に上げてもらって、えっと、家の中といわず外といわず、改善できる場所を提案して、つまりその風呂とか? そのまあ最近は高齢化社会も進んで、家に簡易エレベーターみたいなのを設置する家庭もあると聞きますしそういう」
「できますか」
「え?」
「飛び込み営業はきついですよ。かなり気合の入った人間でないと無理ですよ」
「分かっているつもりです」
「できますか? あなたにできますか? 飛び込み営業の経験がないということはかなり苦労すると思いますが、もしそれでもやってみたいという気持ちがあるのなら面接日時を設定しましょう。どうでしょう?」
「このたびはご縁がなかったということで、すんません」
「了解です。さようなら」
「さようなら」

負った傷が浅くてよかった。今はそう思うようにしている。