27歳男、リーマンショック後にエアー出勤をする

先週の木曜日、私はスーツ姿で白昼の関内をほっつき歩いていた。スーツ姿とは言っても仕事で横浜方面に来ていたわけではない。なぜなら私は無職だから商用でこんなところに来るはずはないのである。ならばなぜ職に就いていない無職男性(27)が平日のオフィス街をスーツ姿で練り歩いていたのかというと、それは大きな声では言えない特別な理由があったからだ。この日採用面接があったわけではない。ならばなぜ? とある人は問うかも知れない。スーツが私服なの? 結婚式にでも出席する予定があったの? と聞いてくる人がいるかもしれないが、そういう人はデリカシーがないに違いない。そんな人は社会に出てもまともな人間関係を構築することなどまず無理だし、出世、結婚など絶対にできない。まして友人・知人から飲み会やキャンプの誘いの声がかかることもまずないだろう。そういう人は集団の中に入ってもうまくやっていけるはずがない。そういう人たちに言いたい、空気を読め、と。
平日の昼間に無職の人間が、面接に行く予定がないのにスーツ姿で街中をほっつき歩いているとしたら、それは九分九厘エアー出勤中の悲しい人である。諸般の事情により家人に離職したことを告げられず、朝いつもどおりにスーツを着て出勤し、マックやサイゼリヤや図書館や漫画喫茶で時間をつぶし、晩になって帰宅するという不幸でありまた勇敢でもあるそういう人たちだ。町で彼らを見かけたら声などをかけずにやさしく見守ってほしい。同情は禁物だ。もし夏の暑い日に汗をかきかき街中を彷徨しているそのような人たちを見かけたとしてもハンカチを差し出したりしないでほしい、冷たいコカコーラなどを差し出さないでほしい。職安の場所を教えたりしないでほしい。全部オールオッケイだから。しっかり生きているから。汗はワイシャツの袖で拭くから。公営図書館の中にある冷水器で水分を補給するから。職安の場所はあなたに教えてもらわなくても頭の中に入っているから。私もしっかりやっているから、大丈夫だ。
一身上の都合により、昨年末で職を辞した。年始から新たな勤め先を探している。月内には決めたいと思うし、私ほどのポテンシャルを秘めている人間ならそれも可能だと思う。ただ決まるまでは、毎朝スーツを着て、マックやジョナサンや映画館に出社する日が続くと思う。それは過酷なことだ。生半可な精神力では耐えきれない。下手したら発狂するかもしれないししないかもしれない。収入がないのにハンバーガー代や映画代など出費ばかりが嵩む。自己破産だってないわけじゃない。住む家を失うかもしれない。幸い私は実家住まいだから大丈夫そうだが、それでも毎日ふるえながら床についている。不安で不安で仕方ない。いつか家人に離職していることがばれるのではないか。夜平然と帰宅した時、ママンに「あんた本当は仕事を辞めてるでしょう? 今までどこで何をしてたのよ?」などと詰問されたら私はどう対処すればいいのだろう。そんなことを考えていたら夜も眠れない。ガストやモスバーガーやネットカフェに出勤する毎日はもううんざりだ。
そろそろ本気で職探しをしようと思った。