転職活動:A社の場合 1/3

【前回までのあらすじ】
私は就職活動に専念するためにアルバイトを辞めた。


先日、第4期就職活動における最初の就職面接を受けた。面接を受けたその会社(A社)は、駐輪場の企画・運営・設計や管理などを主な業務としている。

第4就活期においては、「小規模」「アットホーム」といったキーワードで求人検索をしている。というのも私は人間としての器の面では、世界経済を動かせるような大企業や先進的な外資系企業など、“最前線”で働ける逸材ではあるのだが、性格的には社員数30名以下の企業でほそぼそと働くのがわりかし合っていると自分では思っているからだ。

A社は少数精鋭の企業である。募集職種は企画営業であり、私があまり志望しない職種ではあったが、社員数24名というところに魅力を感じ、このたび志望させて頂いた次第だ。

久しぶりの面接ということで、A社の入っているビルの前に着いたときには少しだけ緊張していた。しかし無人受付システムで人事担当を呼び出し、待合室で担当者を待っているころには平静を取り戻していた。そしていつものように心の中で「働きたくない、働きたくない、何で働かなきゃいけないんだ」とつぶやいていた。

面接担当は、面接官(40歳前後)と記録係(30歳過ぎ)の2人だった。2人とも女性だった。面接官の女性は人当たりの良い人だった。偉そうな感じもせず、過度に仕事に没入している女性特有の先鋭的な雰囲気もなかった。私は初見でこの女性に好感を持った。そのためか、面接ではリラックスでき非常に雄弁になれた。

最初に短所・長所を織り交ぜた自己紹介をした。私は時系列に沿って職歴を述べた。短所(転職回数が多く、移り気なところがある)、長所(煩雑な業務を軽快かつ精確にさばく天才的な事務処理能力)に関しても過不足なく伝えられたように思う。

私が経歴を述べている時の面接官の仕草に、おやっと思わせるようなことがあった。新卒で入社した会社を1ヶ月で辞めたこと次の会社を24ヶ月で辞めたことその次の会社を2ヶ月で辞めたことを述べた時、面接官の女性が「そんなことは初めて知った」といった表情で、手元にある私の履歴書職務経歴書を仔細に読み始めたのだ。これはおかしなことである。なぜならリクナビNEXTからエントリーした時点で、A社は私の履歴書職務経歴書をチェックしているはずだからだ。そしてそれら2つを精査した後に、私に面接日程についての電話連絡をしたはずだ。しかし目の前の面接官は明らかに私の華麗なる経歴を知らなかった。つまりA社は応募してきた人間に対して無条件か、あるいはある一定の条件(年齢や社会人経験の有無など)を満たせば誰でも面接に進めるといったスタンスを取っていたと思われる。


これは私にとって、いいことなのか悪いことなのかいずれとも判断しかねた。事前に履歴書・職務経歴書に目を通されていたら、面接までこぎつけることができなかった可能性はあるが、一方で、面接時に初めて私の経歴を知ったとなると、そのことを知った瞬間面接官が私に対する興味を失ってしまうことも考えられる。そうなると面接時によほど猛烈なアピールをしなければ失墜した私の評価を回復することは不可能なように思われる。

自己紹介の次に、「これまで勤めた会社での成功体験及び苦労体験」などを述べさせられた。
私は24ヶ月勤めた出版社での経験を軸に、自分がいかに困難な状況で働いてきたか、そしてそこからいかに英知を絞って独力で道を切り拓いたかを滔滔(トウトウ)と喋った。

しかし面接官は聞いちゃいなかった。私に対する興味を完全に失っていた。彼女はあろうことか私の話を聞きながら(聞き流しながら)一心不乱にペン回しをしていたのである。これは普通の社会人が取る行為ではないように思われる。さらに言えばそのペン回しが、実にヘタクソなのである。私は今までの人生でそのような緩慢な動きをするペン回しを見たことがない。ペン回しとは通常、指の腹や指の背を使ってシャープペンやボールペンなどを、高速で滑らせ回転させることによって行う幻惑的な芸当であるはずだが、この面接官は5本の指を緩慢に動かしペンを1周させるのにほとんど1秒ほど(遅っ!)かけるといったペン回しならぬ、ただのペン動かしを行っていた。私は不愉快に思うよりもおかしくなって吹き出しそうになった。彼女は一応私の話に興味があるといった感じで相槌を打ったり口元に笑みなどを浮かべていたが、自分の右手にはまったく注意がいかないようであった。この時点で私はこの就職面接は厳しいものになると思い、ほとんど採用をあきらめかけていた。しかし面接はまだ序盤戦であるので今後の私の頑張り次第ではリカバリーできるのではないかという淡い期待もなくはなかった。(続く)