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旅行記 12日目 (チェンマイ)

お昼前に例の若い女医と見たこともない男性通訳がぼくの病室に入ってきたんだ。ぼくはソファーで(言い忘れてたけどぼくの病室はかなり広くて、ベッドのほかに横に慣れるくらい大きなソファーがあるんだあとは、シャワーも完備してるよ、これは言ったね)、本を読んでたんだけど、男性通訳が「元気そうですね。」って言ってきたんだ。(何しろぼくはかなりリラックスして、ソファーと一体化してるかのように寝そべって読書してたんだ)ぼくは苦笑いしてそれに応対したよ。「退院しますか?」っていう問いに「そうですね。」って答えたよ。
それで、14時ごろに退院をしたんだ。病名ははっきりとは分からなかったんだ。通訳の男性には風邪をこじらせたようなもんですよ、って言われたんだけど、退院する間際に看護婦からは「あなたはデングフィーバーなんだから、しっかり休むのよ。」って言われたんだ。おかしいなと思って「デングフィーバーなの?」って聞いたんだ。そしたら看護婦は「ああ・・インフルエンザね。」って言ったんだ。本当の病名はなんだったんだろう。
5日間の入院中にかかった入院費用はほとんどが保険でまかなわれたよ(4万円くらい)だけどなんだかしらないけど115バーツだけ請求されたんだ。なんだこれ、せこいことするじゃないかって激昂しそうになったんだけど、明細書を見るとその内訳は「ミニバーと(保険会社への)国際電話代」だったよ。医者に水分を取れって言われてたからたくさん飲んだんだけど、自己負担だったとはね、まあいいんだけどさ。それで病院の車で町の中心地まで送ってもらったんだ(言い忘れてたけどぼくが入院していた「チェンマイ総合病院」ってのは城壁で囲まれた市街地のすぐ外にあったんだ)
町の中心に戻って来たらすぐに、ゲストハウスにチェックインしたんだけど、実はというか告白するとまだなんとなく体調がよろしくないというか、ちょっと咳き・鼻水の症状が出てたんだ。だから食後には病院でもらった薬を飲んでたよ。

それでまた告白するんだけど、正直もう旅行は止めにしようと心に誓ったんだ。いや誓ってたんだな。入院当夜のあの冷え冷えとした病室のベッドの中で。なんだか、あのときにもう旅行を続けられるような体調じゃないって思ったんだ。一応5日間入院してそれなりに回復はしたんだけど、なんだかもう依然とは体力や気力が別人になっていたんだ。だるかったんだ。だから、もうすぐに一目散に日本に退却しようって強く思っていたんだ。もうちょっと症状が落ち着いたらすぐに列車に乗ってバンコクに戻って、その足で旅行会社に行って帰りのチケットの変更手続きをお願いしようって考えてたんだ。なんだかこうなるとまるで逃げ帰るかのように思うかもしれないけど・・さにあらず・・・っていいたいけど、事実ぼくは泣きながら退散を決意したようなもんだったんだ。イヤイヤをする幼稚園児みたいなもんさ、あーあ。タイに来てから漠然と持っていた旅行の計画では、タイ全土をくまなくまわって、マレーシアやシンガポールにも行こうなんて沢木耕太郎的なホウロウでもいっちょかますかなんて、意気込んでたところもあったんだ。(事実旅行前に例の『深夜特急』のタイ・マレーシア・シンガポール編を読み直そうかなんて考えてたんだ。結局ほかに読む本があったから読まずじまいだったんだけどさ)だもんで、結果的にバンコクチェンマイの2都市だけしか行けなかったのは、ぼくにとっては敗北以外の何ものでもないなんて思っていたんだ(半分は冗談だけどさ)(余談だけど、日本出国前にWOWOWで『ザ・ビーチ』を観たんだ。ディカプリオ主演の映画だよ。タイが舞台になっていてちょっと興味を惹かれて観たんだ。観たのは八月の末くらいだったかな。プリオ主演でリゾート地が舞台ならただの恋愛映画だろうなって漠然と考えていたんだけど、そうじゃなかったんだ。面白かったよ。映画の内容は端折るけど、要は理想郷を獲得したかにみえた、プリオたち一団がその理想郷維持のために狂っていくって話なんだ。外部からの侵入者を排除しちゃったりさ。それで・・なんの話だっけ?その映画の舞台がタイのピピ島ってところだったんだけど、そこにも行こうかなんて思っていたんだ。どうでもいいことなんだけどさ。)

退院後はもうはっきり行って荒れすさんだ生活に没したよ。やけ酒は・・しなかったな、下戸なんだぼく(言ったかもしれないけどさ。)あーあ、だからもう部屋で退廃的な生活を送ったよ。カーテンも開けずに・・いやカーテンはなかったな、といか窓なんてものは安宿にはないな。それでタバコをプカプカ・・いや待てよぼくはタバコをやらないんだ。だもんで1日中薄暗いゲストハウスの部屋にいたんだ。麻薬漬けの毎日さ・・・映画の中ならね。あーあ。麻薬ってゲストハウスの受付とかで売ってないのかなぁ。あーあ。だから、1日中部屋で「レアルTV」のリピート放送。セルヒオラモス・イエロ・エルゲラのインタビュー。3年前の対マラガ戦のダイジェスト。レアルのバスケットチームの・・なんだか分かんないよ。とにかくリピートリピートリピート。リビドーも消滅するよ・・なんてね。ダジャレだよ。

そしてぼくは決心したんだ。もう貧乏旅行なんてクソくらえだ。これからは散財だ、てね。ぼくのこの逃避行にささやかな彩を加えてやろうってそう決心したんだ。さしあたり何をする?食だ。タイ料理はまずくないけどうまくもないよ。率先して食べることはないな、なんて思ったんだ。(ちょっと精神は荒んでるね、いい感じだ)今後は日本食で行こうって思ったんだ。だけどそこで問題が発生したんだ。つまり、食欲がまったくなかったんだ。病院では3食しっかり食べてたんだけど退院したとたんの食欲減退。だから夕飯はなーんにも食べなかったよ。
とにかくもう旅行なんてやーめた。