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旅行記 3日目 (バンコク)

タイ旅行

8時ごろに起きて、シャワーを浴びてボケーっとしてたらなんだかお腹がすいてきて、近くのコンビニまで朝飯を買いに行った。この時間のカオサンロードは本当に静かで人もまばらなんだよね。正直に告白すると、ぼくはカオサンが嫌いなんだ。人が集まるところとかが大の苦手で会合とか打ち上げとかの類にはめったに顔を出さないんだ。全員出席が義務づけられているような大事な集まりがあっても平気で欠席届けを出しちゃうタイプなんだな。無断欠席よりも欠席届を出すほうが「行きません。」っていう意思表示が強く出ていて幹事の人には、なんていうか威圧的(?)敵対的(?)な印象を与えてしまうんだけど、それでもぼくは頑としてその意思表示をしてしまうんだ。すっぽかすってのがどうにも苦手で、一つには小心がそうさせるんだけど、それよりもなんというか妙なまじめさがぼくにはあるんだ。周りの人たちには分かってもらえないところではあるんだけどさ。

朝食をとったらもうすることがなくなっちゃったんだ。何しろ予定は1つもないし、あらかじめ行きたいところを考えていたわけじゃないし。島田君はもういないんだ。彼はカンボジアに行っちゃたよ。今朝早くのバスで。部屋を出るときに「じゃ。」とだけ言って、なんとも淡白な別れだったな。アドレスの交換もしなかったし。もしかしたらぼくは島田君を傷つけてしまったのかもしれない。ぼくがなんとなく彼に衆道のケがあるんじゃないかなんて思っていたもんだから、もしかしたらあっちもそれを敏感に察してちょっと距離をとってたのかな。結局彼がどっちだったか分からないけど、いいやつには違いなかったから、やっぱ悪いことしたな・・・。

ベッドに横になって「地球の歩き方」を見ていたんだけど、まったく行きたいところがなくて、ぼくはタイに何しに来たんだろう?なんて身も蓋もないようなこと考え出しちゃったよ。
とにかく今日の宿を探すために外に出た。荷物は宿の荷物室に預けて。さっきも言ったけど、とにかくもう言っちゃうけど、ぼくはカオサンってところが嫌いなんだ。到着日に島田君が夜のカオサンを見て「俺こういうの好きだ。」なんて上気した顔で言うから、ついぼくも「うん。」なんて言っちゃったけど、ほんとは、ここの雰囲気はぼくには合わないなぁなんて密かに思っていたんだ。ちょっと賑やか過ぎるんだ、ぼくには。

だから、次は大通りを挟んでカオサン通りの向かい側にある「ワット・チャナナソンクラム」って言う地区(ここはカオサンから歩いてすぐのとこなんだけど、人通りはカオサンに比べてずいぶん少ないんだ)に宿をとったんだ。そこは前日まで泊まっていたとこに比べると規模も清潔さも劣るけど、とにかく宿泊料150バーツ(450円)ってのに惹かれたね。すぐに荷物を移したんだけど、またまた暇になっちゃったんだ。旅行に出て暇になるってのは、ぼくの十八番なんだな(困ったことだ。)
でも、ベッドと扇風機しかないこの部屋にいても息が詰まっちゃうからとにかくまた外に出たよ。それでなんとなく、歩き出したんだな。北のほうに。ぼくはかなりの方向音痴で、目指している観光名所とかホテルとかにはほぼ間違いなくたどり着けないんだ。自慢じゃないけどさ。それで今回の旅行には、冒険家よろしく方位磁針を持ってきたんだ。なんとも仰仰しい装備さ。
詳細に「地球の歩き方」を見てたら、カオサンの北はドゥシット地区といって宮殿やら動物園があって相当に楽しめそうなんだな。ぼくは動物園が好きなんだ。特にサルが好きなんだ。あいつらはほんとにサービス精神旺盛で、呼んだら絶対にこっちを見てくれるし機嫌がいいときは、ブランコみたいなのをこいでかなり観客を喜ばせるんだ。だからサルの檻には絶対に行かなきゃ。
ガイドブックと方位磁針を持って、相当な距離を歩いてやっとのことで、「ウィメンマーク宮殿」に着いた。宮殿の入場料を払って中に入ったんだけど、女性のスタッフがなにやら英語で喋りかけて来たんだ。だけどぼくは英語が分からないんだ、からきし。大学卒だから、基本的な単語や文法は分かるんだけど、なにしろ相手の言ってることが分からないんだ。今年の春に、友達とヨーロッパに旅行に行ったときも「ハウオールドアーユー?」が聞きとれなくて、2日間くらい落ち込んだね。周りの人たちの様子をうかがって、やっとの事で状況を把握できたよ、要するにもう少ししたらガイドツアーがでるからそれまでそこのベンチに座って待っててくれってことらしいんだ。まったく、日本語の案内板とか出しといてくれよって感じだよ。5分くらい待ってガイドツアーで見学が始まったんだけど当然英語なんだ。それなら一人でまわらせてくれよって思ったよ。(館内見学はガイドツアーじゃなきゃまわれないらしいんだ)ぼくの他には2人組みの中国人の女の子と白人の熟年夫婦が2組。計7人。白人夫婦は当然として、中国人もどうやら英語が聞きとれるみたいなんだ。ぼくよりだいぶ若くてまだ10代なんじゃないかな。まったく、英語も喋れなくて(聞きとれなくて)あんまりタイにも興味ないのに、今このうぃめんまーくきゅうでんってところで異国語の解説をBGMにふらふら宮殿を歩いてるぼくってかなりわけわかんない存在なんじゃないかしら。とにかく40分くらいのガイドツアーを無事にやり過して(?)宮殿の外に出たよ。宮殿内は土足厳禁だから下駄箱で靴を履こうかと思ったんだけど、スタッフが寄ってきて、「脱げ。」とか言ってきたんだ。ぼくはちょっと不愉快な面持ちで、もう見たんだってことを言ったんだけど伝わらなかったね。予想通りだ。いつだってぼくの英語は通じないんだ。スタッフとぼくと2人ともが異文化コミュニケーションに失敗し悄然としてるところにさっきガイドをしてくれたスタッフが来た。そのスタッフが、しょんぼりしているスタッフに何事か声をかけたんだけど、どうやら「その人はもう館内見学を済ませたわよ。」ってなことを言ったみたいなんだ。それでぼくは無事解放されたよ。やれやれだ。

なんだか、もう疲れちゃったんだ。動物園のサルなんてどうでもいいや。もう帰ろう。ぼくはすぐに疲れちゃうんだ。実際23歳ってのはかなりイイ歳だと思うよ。1日中歩き回るのなんて土台無理な話だ。
ぼくは歩くのにも疲れてタクシーで宿に戻った。(タイのタクシーってのはホントに安いよ。ぼくがこの旅行で一番長く乗車したのは時間にして30分くらいのとこで、値段は300円にも満たなかったからね。)

とにかく宿のベッドでごろごろしてそのあとごろごろしてまたちょっとごろごろしたんだ。ごろごろしてたら16:00くらいになったんだ。もうすこしごろごろしようと思ったけど、今僕はタイにいて、海外旅行に来てるんだなんてことを、今さらながらに考えて、とにかくカフェでコーヒーでも飲むかなんて素敵なことを考えて外に出たんだ。

ぶらぶら歩いてカオサンまで行ってコーヒーを飲んだら17:00くらいになったんだけど、まだ夕飯には早いなぁなんて思ってカオサンロードにあるマックの前のベンチに腰掛けてたんだ。30分くらいボーっとしてたら、日本人に話しかけられた。「火ないですか?」どうやらタバコを吸うためにライターかマッチでも貸してくれないかってことらしいんだけど、ぼくはタバコはやらないんだってことを言ったら「そうですか。」って言ってどっかに行っちゃったよ。でも彼はすぐに戻ってきてぼくの隣に腰掛けたよ。ぼくが「買ってきたんですか。」って言ったら「ええ、コンビニで。」と彼が言って、その後は何を話したかもう忘れたけど、暇なんで一緒にどっか行こうってことになって、なんだか分からないけどまた「パッポン」に行くことになったよ。

彼の名前は早田公平君で23歳の大学4年生ってことでまたまた同い年の旅仲間ができたってわけ。なんでも一緒に旅行に来ていた友達が日帰りツアーに出ちゃって夜まで帰ってこなくて暇を持て余してたらしい。海外旅行中に暇を持て余す人に悪い人はいないはずだなんて、猛烈に都合のいいことを考えて、彼と話してたんだけど、なんていうか彼はちょっと変なヤツだったな。話が支離滅裂なんだ。ぼくがどこに泊まっているの?って聞いても、「そうなんだ、同じドミ(ドミトリーね)に麻薬中毒の日本人がいてさぁ、へへ。」なんて答えにならない事言ってきて、パッポン行ってどうしようかなんて話しても、「へへ、女性器からピンポン球がさぁ、へへ何十個も出てくるんだ、へへへ。」なんて言い出して、ぼくが「へぇ、パッポンの店で、それを見たんだ。」って聞いたら、「あの店どこだっけなぁ。」なんて考え込みだしたから、「そのピンポン玉の?」ってぼくが聞いたんだ。そしたら、「ゴーゴーボーイのさぁ。」なんてまた話がぶっ飛んじゃって、ぼくはもう彼の話についていけなかったなぁ。そうこうしてるうちにパッポンに着いたんだ。タクシーを降りて、彼が歩き出すほうへついて行ったんだけど、なんだか、うろうろするばかりで一向に目的地に着かないんだ。この時点でぼくは彼がどこに向かっているのか皆目検討もついていなかったよ。彼の話から何か物事を推測するのはまず不可能なんだ。20分くらい歩いて「見つからないなぁ。」なんていうからぼくも「そうだね。」なんて同調してみたんだけど、何が見つからないの?って感じだったよ。もうぼくは、くたくたで、どっかのレストランかなんかに入りたかったんだけど、彼が「あー、ここ入ってみようかなぁ。」なんていうからその店を見てみたら、そこはゲイバーだったんだな。「地球の歩き方」には2階にあるゴーゴーバーやゲイバーは危険なので立ち入らないほうがよい、なんて書いてあったんだけど、そこの店は、まさにその危険渦巻く2階部分に店を構えていたんだ。そこの店にあんまり危険を感じなかったのは、店の前の客引きがあんまりぼくたちを相手にしてなくて、なんだかちょっと紳士的に見えたんだ。結局なんだかわかんないけどこっちから客引きによっていくかたちになっちゃたんだ。変な話だけどさ。それでその客引きがその店のオーナーだったんだけど、どうもまだ店は準備中らしくて「ショー」は22:30から始まるって言うんだ。ぼくと早田君はどうしよっかぁまだ20:00だし待つのもねぇ〜なんて話してたんだけど、そのころにはもうすっかりその店は優良な店で入店することになんにも疑問を感じてなかったよ。5分ばかしまごついて、どうにもならないからどちらからともなく、ビールでも飲んですぐに出てこようかなんて、好奇心旺盛な若者らしく勇気を振り絞って階段を上っていったんだ。店内は薄暗くてぼくはなにかあったらすぐに逃げ出せるように階段付近のテーブルにつこうかと思ったんだけど、オーナーがそこじゃなくてこっちってちょっと奥まったところにぼくたちの席をとってくれたんだ。もうぼくはその時点で怖くなっちゃったんだ、なにしろ店内には1人の客もいなくて、店内にいるのは皆お店の従業員でステージにはパンツ姿の男というか男の子たちが20人くらいいたんだ。もし襲われても、逃げ出すことはまず無理だと悟ったよ。ぼくたちはハイネケンを注文して、ぼんやりというか硬直した表情でステージ上を見てたんだ。そこにオーナーがきて早田君と話し始めたんだ。早田君は英語ができて結構オーナーとも仲良さそうに話してたよ。だけど、ちらっと早田君の膝元を見ると、オーナーがその太ももを撫でてたんだ。そのときになった改めてここがどういった趣味を持った人間の集まるところか遅まきながら再認識したんだ。
ぼくは変な話だけど、テーブルにあるハイネケンのビンはいざって時に武器になるな、なんてことを考えていたんだ。(笑っちゃいけないよ。)そこに制服姿の店員が寄ってきてぼくの耳元で「ユーアーストロベリーキュート」って言ったんだ。ぼくはさらに身を固くしたよ。入店して10分くらいしてステージ上ではリハーサルが始まった。小・中学生の海水パンツみたいな(例の紺色のパンツだよ。)白色のパンツ一丁で踊っているんだけど、皆かなりやる気なしで早田君なんか店を出た後に「プロ意識が足りない。」なんて不満を漏らしていたよ。
早田君がオーナーに聞いたところによると、ダンサーは皆14歳以上でそれ以下の年齢は法的にまずいらしいんだけど、14でいいの?ってぼくは思ったんだけど、確かにみんなやたらと若いんだ。それこそ中学生みたいな子がたくさんいて。その一人がぼくの隣に座ったんだ。もちろんパンツ1丁の姿で。半そでシャツからでたぼくの左腕が彼のむき出しの腕に触れた時は妙な生暖かさを感じて、逆に異様な寒さにブルッときたよ。その男(の子)と少し話してるうちにもうここは出なきゃまずいなって思ったんだ、なぜってその子がこの後の予定やホテルはどこに泊まってるの、とか聞いてきたからいよいよかなって思ったのさ。わかるだろ?それでそれは早田君も感じてたらしくて(オーナーの手はずっと早田君のももの上にあったよ。)「出よう。」ってことで意見は一致したよ。勘定を払って、逃げるように店の外に出たんだけど、外に出てみるとなんだか、びびり過ぎてたんじゃないか、なんてお互いに言い出して、早田君なんか今度の春には22:30から始まるショーを見るためにまた来ようかななんて言ってたよ。好奇心旺盛だよまったく。

カオサンまでタクシーで戻って、まだ早いからってんで歩道の縁石に腰掛けてなんとなく行きかう人を見てたんだ。時刻は21:00くらいでまだまだカオサンは賑わってたよ。早田君はタバコをとりだして、「吸う?」なんてぼくに聞いてきたもんだから、「いや。」と言ったんだけど、ぼくがタバコを吸わないのは知ってるだろう、なんて思ったけど、まあどうでもいいやそんなこと。だけど、「酒もタバコも吸わないなんて・・・楽しい?」なんて言ってきたときはかなり辟易したね、まじで。さっき、ゲイバーで注文したハイネケンを半分も飲めなくて残して出てきたんだけど、それを見て早田君はぼくのことを下戸と判断したんだ。確かにぼくは下戸でタバコもやらないよ。でもそれがどうしたんだってことさ。酒もタバコもコーヒーもただの嗜好の問題さ。それが楽しみに直結するならそれは個々人の問題で、まるで全人類の、最大の楽しみは酒とタバコにあるみたく言うのは極端な思い込みでそれで他人の人生の良し悪しを判断するなんて迷惑千万だね。これでもう、かなりうんざりした気持ちになったね。君のくわえてるタバコをひっつまんで路傍に放ったら君の楽しさは半減するのかってことさ。君から酒を取ったらつまらなさに耐えかねて狂死するのかってことさ。ぼくは露骨に不機嫌な顔をして、また行きかう人々に目を移したんだ。だけど、もうここから1秒でもはやく去って宿のホテルでごろごろしたいなぁって思ったんだ。10分くらい無言でいたんだけど、「もう帰るよ。」ってぼくが言って「そう。」なんて彼が言って、二人とも立ち上がったよ。彼が習慣的に自分のノートブックを出してきて「アドレス交換しとこっか。」なんていうからまた縁石に座ってお互いにアドレスを交換したんだ。だけど、お互い連絡し合わない事は分かっていたよ。そういうのって分かるもんだよ。

宿には歩いて5分で着いたよ。シャワーを浴びてすぐにベッドに横になったよ。そういえば夕飯食べてないな、なんて思ったけど、気にせず目を閉じたよ。空腹なんて感じなかったね、全然。

地球の歩き方